不動産トピックス

クローズアップ 非破壊検査編

2009.02.02 10:18

 長年風雨にさらされる外壁は、ビルの中でも特に傷みやすい箇所のひとつである。放置すると水漏れや外壁の剥落が発生しかねないため、定期的な点検が必要となる。この点検にかかるコストと時間を節約するのが、非破壊検査による診断技術である。足場の構築や手間のかかる打診といった作業を省略できるこの技術は、検査制度の向上により一段と身近なものとなっている。

三井造船 コンクリート内部を立体的に視認 操作は表面をなぞるだけ内部の問題を浮き彫りに
 三井造船(東京都中央区)は非破壊型のコンクリート検査機器「マルチパスアレイレーダ」を開発・販売している。
 この製品は、コンクリートの表面をセンサーでなぞることで、コンクリート内部の状況を立体的に把握することができる。
 センサー部の中には最大32のアンテナが内蔵されており、ここから照射された電波がコンクリート内で反射したものをキャッチ。このデータを再計算して内部の構造を立体的な画像として出力する。
 マルチパスアレイレーダの最大のメリットは、この立体画像が得られる点にある。
 出力された画像は専門的な解析を行わなくても、誰でも一目で問題箇所が分かる上に、井桁状に組まれた鉄筋の下のような、一方向からだけの検査では発見できない箇所の空洞も見逃さない。
 仕組みとしては、電波は内部の鉄筋や空洞、グラウトなど当たるものによってそれぞれ反射の仕方が異なる。それをさまざまな方向から当てることで、多角的に中の状況を把握できると言う仕組みだ。なお、この映像は搭載されているアンテナの数が多ければ多いほど詳細な画像が得られる。「マルチパスアレイレーダは検査と出力された画像の分析のどちらにも専門知識を必要としません。そのため、誰でも簡単かつ確実にコンクリートの状態を把握することができるのです」(馬場氏)

MEDEC 撮影した画像を解析し診断
 MEDEC(横浜市磯子区)はフリアーシステムズジャパン(東京都品川区)の赤外線カメラで撮影した画像を用いた外壁の診断サービスを提供している。
 赤外線カメラは用途や使用環境に合わせてさまざまなタイプの機種が提供させており、外壁の近くで診断を行う際に利用するハンディタイプから、隣のビルなど離れた地点から撮影することを想定したプロ使用の上位機種までさまざまな機種があり、価格も1台60万円前後から500万円前後までと多岐に渡っている。これらのカメラで撮影した画像を、同社が開発したソフトで解析すると、内部で漏水が起こっていたりはく離が起きているといった状態がひと目で判別できる。
 撮影そのものには複雑な作業や技術を要しないため、カメラさえ入手して撮影すれば、あとは同社に画像を送ることで、非破壊検査に関する知識がほとんどなくても簡単に外壁の診断ができる。
 また、外壁以外にも天井や窓、さらには断熱などの状態も診断することができるため、さまざまな用途で活用できる。
 「外壁の診断を行うには、建物の周囲に足場を組んで、時間をかけて直接打診する必要がありました。それだけでかなりの時間と費用がかかってしまいますが、赤外線カメラによる非破壊検査なら足場を組む必要も無いため、結果的にコストを安価に抑えられる上、複数のビルを持っている場合にはより効果的だといえます」(小畠氏)

山武商会 簡単操作で赤外線診断が可能 付属のソフトで画像解析も容易
 山武商会(東京都豊島区)は、米国フリアーシステムズ社の赤外線サーモグラフィ製品のフルラインアップを1月から販売開始している。
 赤外線サーモグラフィは、対象物が出している赤外線放射エネルギーを検出・可視化して、温度測定・温度分布を画像で表示する。同社は平成20年7月からフリアーシステムズ社の赤外線サーモグラフィ「FLIRi5」を販売している。
 FLIRi5は、340gと小型・軽量なためどこへでも持ち運びが可能なハンディタイプで、価格は45万円と同社の従来製品と比べ最も低価格である。
 「見て」、「撮って」、「すぐ分かる」の簡単3ステップにより、過去に赤外線サーモグラフィを使ったことがなくても簡単に操作ができ、集めたデータを解析するソフトウェアが付属されているため、簡単に報告書を作成可能。
 FLIRi5は特殊な用途のみならず、様々な一般的な用途で簡単に使用することが可能で、室内の保全・点検時に、サーモグラフィの温度の画像表示によって、異常のある部分を簡単に発見することや、建築物や設備機器において、断熱の不十分な箇所などの検知にも役立てることができ、ユーザーの現場の安心・安全や保守メンテナンスの負荷の軽減を実現する。
 なお、同社ではフリアーシステムズ社の赤外線さーもグラフィ製品による3年後の年間売り上げ目標を2億円と想定している。

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