不動産トピックス

クローズアップ 免震対策編

2007.07.02 15:25

 常日頃、地震の発生が多いと感じることはないだろうか。ここ数年、新潟中越地震や能登半島地震をはじめ、政府が予測するポイントとは別の場所に大型の地震が発生している。人ごとではないこの事態に対し、ビルオーナーの生命と財産を守る有用な方法としての免震システムがある。

アイディールブレーン OAフロアの免震でデータを守る 天井高を犠牲にしないシステム
 アイディールブレーン(東京都中央区)が開発した「ミュー・ソレーター」は、既存オフィスの床に敷き詰めて免震可能な、新しいタイプの「すべり免震支承」である。
セルという、厚さ8mm直径150mm程の、凸型ボタンのような形状をした突起が並ぶステンレス板の上を、表面を潤滑剤で加工されたパネルが滑ることで免震する。
 この製品は従来の免震システムのような長期間の施工が必要なく、カーペットを上から敷くことができるためデザイン上の違和感がない。
 パソコン、サーバーでデータ管理をする会社が大半である現在、床の免震によってデータの消失という2次的被害からも免れることができる。
 「現在、サーバーやパソコンに頼らずにデータ管理している会社はほとんどないでしょう。仮に地震が建物倒壊まで到らなくても、物が落ちる程度ならば数多く発生しています。この技術で、データの損失による会社の信用が失墜する危険性から守ることができるのです」(代表取締役社長佐藤孝典氏)
 ミュー・ソレーターのタイプは大きく分けて2つ。OAフロア用「フリーフロア」とサーバー本体用「フリースペース」である。どちらも可動範囲を周囲に取り、その上に滑走プレートを置くことで免震する。フリースペースでは床下空調設備にも対応し、冷気の噴出し口を塞ぐことなく滑走プレートを装着できる。
 新しく厚さ1㎜のセルも発売開始する。

アイ・エー・ユー ボールベアリングで揺れを軽減 風による揺れも計算済電源不要で非常時対応
 アイ・エー・ユー(東京都中野区)が開発した「IAU型免震システム」は、住宅から高層ビルまで対応可能な免震技術である。
 もともとは住宅用に開発されたものだが、現在は中小規模のビルにも導入されているという。
 その中で基本的な免震装置となる「転がり免震支承」は、床の下4隅に設置されたベアリングと呼ばれるボールが転がることで、地震時に起きる揺れを吸収するというもの。ボールを上下にはさむ受け皿はボールを中央に寄せるようわずかにへこんでおり、大きな揺れが生じて受け皿の幅以上にボールが動こうとしても、ストッパーがついているため、落ちてしまうことはない。
 「移転費用や施工中のストレスが少なく、精神的負担を軽減できるように配慮しております」(取締役社長北村二郎氏)
また免震装置には、平時、風による揺れが大きくなる傾向がある。突風を受けて25以上揺れることが、一週間で2、3回以上あることが同社の実験でわかっている。
 その点、同社が開発した「風揺れ固定装置」は、通常は躯体を固定しているが、震度3から4を感知すると自動的にストッパーが外れて免震装置が作動する。
 「非常時、電気が止まることを予測し、風揺れ固定装置では、電気を使わないセンサーを使用しています」(北村氏)

東京ファブリック工業 弾性スベリ支承で地震力を低減する 2種類のゴムと形状から用途に応じて選択
 東京ファブリック工業(東京都新宿区)が開発した「レトロフィット」は、積層ゴムと滑走するステンレスから構築される「弾性スベリ支承」の免震システムである。
 躯体の下部に設置されるが、滑走プレートはエポキシ樹脂の潤滑塗膜が塗装され、地面側のステンレスプレートと滑ることによって免震を可能にする。
 このシステムの内部には積層ゴムが装着され、地震が起こる際に発生する躯体のねじれを、建築物下に施工される積層ダンパーの歪みと同調してずれることで防止する。
現在は丸型が主流で、ゴムは天然ゴムとネオプレンゴムの2種類から用途に応じて選択できるというもの。
 また、新商品として今年6月下旬に許可申請が降りた角型は、従来品では、かかる圧が偏るとして避けられてきた形状であったそうだ。
 「使用するゴムの製造技術の進歩で、今回開発に成功しました。耐荷重が従来の丸型の3割増しとなり、施工する直径も丸型に比べてコンパクトになるため、結果としてコストは3割減となります」(事業本部次長三田村秀雄氏)
 耐荷重が1c㎡あたり150kgであった従来品に対し、1c㎡あたり200kgへと商品性能を向上。結果的にコストとスペースの削減に成功した。
 角型タイプは今月18日に認定が下りている。

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