不動産トピックス

クローズアップ 手すり編

2007.05.14 17:25

 バルコニーなどに取り付けられている手すり。一見単純な構造のように見えるが、実際は景観や新しい耐久基準などの要求に伴い、製品も多機能化している。建物の供給形態の多様化に伴いニーズが複雑になる中で、現在の手すりはどのような機能を備えるようになったのだろうか。各製品の特徴を紹介する。

岩井金属工業 BL基準以上の強度落下防止の部品工夫 高い安全性を確保 付属部品選択可能
 住友軽金属グループの岩井金属工業(東京都千代田区)はBL基準認定の「バラスタシリーズ」を製造、販売している。
 BL(ベターリビング)は1m当たりの加重が廊下・バルコニーでは300kg、窓側では150kg以上の負荷に耐えうるという安全基準で、バラスタシリーズは基準値以上の安全性を誇るという。
 傘木と手すり、パネル部はアルミで、躯体内部で支柱となる部分はスチール製。
 スチール材がはまる躯体内部には、同社が開発した「テトラカップ」をはめこみ、中に無収縮モルタルを流し込んで固定する。四隅が丸くなっており、荷重によるクラックを抑制できる構造だ。また、既存建物でも取り付けやすい「シューズアジャスター」をオプションとして選択できる。これは、一般製品が躯体内部の鉄筋との溶接によって取り付けるのに対して、躯体表面に設置できるもので、躯体をはつらずに施工が可能だ。
「共用部である廊下に使う手すりは、各部屋のベランダ部に比べ強度が必要になるので、スチール材を採用しています」(権藤氏)
 同シリーズの持ち出し型の手すりは、フェンスを支えるアジャスターを、2本の溝に引っ掛ける金具で固定するため、万一ネジがはずれても落下を防止することができる。
 また、シリーズ製品の着色は樹脂着色と電解着色が可能だが、電着のパネルは国産のアルミに限定しているという。「国外産のアルミですと色ムラが出ますので、国産に限らせていただいております」(同氏)
 縦格子タイプで1万8000円。樹脂着色パネルが4万5000円。

井上商事 風切音防止と耐久性2方面のアプローチ 耐久性と軽量化を実現する総アルミ製手すり
 井上商事(福井県福井市)はアルミ手すりシリーズの「シルバーライン」を製造、販売している。製品の特徴は全部品にアルミ・ステンレスを採用していることである。通常は塩ビ製が多い端末キャップやジョイント材にも、アルミを使用することで耐久性を向上した。
「塩ビの価格は安いのですが、数年で変質・劣化する性質があります。当社では耐久性と部品交換の点に考慮して、10年ほど前からアルミを使用しております」(朝井氏)
 また、躯体にねじ込む寸切りボルト部もステンレスで、強度の向上とサビの発生防止を図っている。ボルトは2本挿入するツインアンカーで、安定性を確保した。足元の化粧キャップには耐久性、対候性に優れたアルミダイカストを使用している。
 同社は、近年問題となっている建物の風切音対策として格子に着目。縦横20×20の格子ピッチを30×15にすることで防音する「サイレンド」を開発した。風が吹き抜ける際に、格子の風下側に発生するカルマン渦の発生周期と、格子材の固有振動数が重なることで発生する低音を、風が風下側に流れやすくすることで抑制する。
 この製品は、格子によって音を軽減するため、パネルと並べて施工でき、防音とデザイン性を両立できる。サイレンドと組み合わせ可能なのは「ブラインド」、「フェイス」シリーズの製品。
 どちらもすべてアルミ部品で統一しており、ブラインドはスラブ下まで覆うタイプで、フェイスはルーバータイプと組み合わせることができる。
 価格は1段傘木縦もじが2万6000円。プラス5000円でサイレンド仕様に変更可能だ。

カツデンアーキテック 面材にガラスを使用 武士の鎧をイメージ 意匠性重んじ他にないデザインを開発  カツデンアーキテック(東京都中央区)は、主に室内用ノックダウン式のスチール階段とアルミ手すりを扱っている。
 「手すりは建物の外観イメージを左右する重要な要素です。当社ではデザインに注力し、他社が考えないものを開発するため努力しております」(代表取締役坂田清茂氏)
 同社は建築家の意図やデザインのニーズを汲み取り、コラボレーションにより製品開発を行う。その意匠性の高さから、横浜赤レンガ倉庫ではパーティションとして使用されるなどしている。
 代表製品は、20数年前に発売したアルミ手すり「KDLine」シリーズ。当時の手すりは縦格子が標準だったが、強度の問題をクリアし、柱の支柱の見付をスリムにし、水平ラインを活かしたデザインとした。
 最近の新製品の一つが甲冑をイメージした「YOROI―ヨロイ―」である。近年増加した、ガラスを活かしたデザインの建築物に合うよう、要望を受けて考案されたものだ。昨年3月に初台に竣工したマンションに採用されている。ルーバーと組み合わせることもできる。
 手すりの面材にガラスを使用した前例がないため、施工費は従来の手すりの4〜5倍ほど掛かったが、実績が増えればコストダウンも可能だ。
 「資料の問い合わせなども多く、手ごたえを感じています」(同氏)
 製品価格と施工費は、いずれの製品も物件により異なるため、現場での相談となる。

YKKAP 多彩なバリエーション揃え高い汎用性を誇る 意匠性と汎用性両立した「デリエ」シリーズも有
 YKKAP(東京都千代田区)の手すり「YTL-Ⅲ」は、住宅からオフィスまで広く使用されている。ビルにおいては、主に廊下・バルコニーに全面ユニットタイプと標準型の組み合わせ、全面ユニットタイプと持ち出し1型の組み合わせ、もしくはトップレールタイプと標準型の組み合わせが採用される。
 標準型のデザインには、格子タイプ、目隠しパネルタイプ、全面目隠しパネルタイプ、格子タイプを揃えている。持ち出し1型は、建築物としての美しさをより追求したタイプで、手すりユニットを支柱の外側に持ち出すことで、外壁とのフラット感を生む。こちらは、格子パネルタイプ、パネルタイプ、箱曲げパネルタイプを揃えている。
トップレールタイプは、水平ラインを活かした格子タイプとなる。木造・非木造を問わず取付可能な笠木「ハンドレールⅡ」と部材共有化で選択の幅を広げた。
 また、もともと集合住宅のアルコーブ廻りをトータルコーディネイトする「デリエ」シリーズから生まれた手すり「YTLデリエ」は、シリーズの「意匠面でのトータルコーディネイト」というコンセプトを引き継ぎ、スマートなデザインと汎用性の高さとを両立している。商品色は、ブロンズ1N、ブロンズ5N、ステン1N、ステン3Nの4種。笠木の色は、色無し、ゴールド、ステン1N、ステン3Nを用意している。

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