不動産トピックス

快刀乱麻

1995.03.01 11:35

 阪神大震災以降の顕著な傾向としてオーナー、仲介業者が声を揃えて指摘するのが「テナント側が入居するビルの耐震性に対して神経質になっている」ということ。とある外資系企業が入るビルオーナーの場合、「本国からの指示で耐震性を証明する書類を出してくれ」と迫られたとか。一般マスコミがこぞって震災報道、検証に力を入れた結果、「建築マメ知識」がすっかり人々の間に広まったことを反映したものといえる。こうなると直接ビルを探す企業担当者も大変だ。何せ事務移転の稟議を上げようにも、「そのビルは何年の竣工かね。その年次じゃ新耐震基準の改正以前じゃないかね」などと知ったような指摘が入りかねず、慎重になるのも仕方ないところだろう。こうした傾向はまた、様々なニュービジネスの可能性をも内包している。いわく「ビル耐震新案専門業」、「オーナー対象・危機管理コンサルタント」、「ゼネコンによる大規模なリニューアル攻勢」…。
 こうしたビルリフォーム展開を「火事場泥棒」式に揶揄する向きもあるが、それは筋違いというものだ。ことの本質はオフィスの安全性追求により、これは本来何より優先されるべきこと。その安全対策に正面から取り組むことが、震災の教訓を活かす道となる。「安全」ビジネスが本格的に賑わってこそ、ビル業界も新たな一歩に踏み出せるといえよう。




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