不動産トピックス
快刀乱麻
1995.02.01 10:37
「大震災」。古めかしさすら覚えるこの言葉が、よもや再び現実のものとなろうとは。凄まじい惨劇の余韻はいまだ冷めやらず、「地震前」と「地震後」では、この国の空気の重さまでもが一変してしまったかのようである。
既に言われるように今回の大地震は我々に様々な問題を提示した。国家的な危機管理体制、ライフラインの脆弱さ、等々。そして多くのビルが次々と崩れ落ち、燃え尽きていく中で、オーナーにとっては何といっても、ビルの安全対策という大きなテーマが突きつけられた。
当惑しているオーナーも多いことだろう。長引く不況に加えて二重の試練でもある。
しかしこれだけは言える。かつて関東大震災は、その後の建造物の耐震性の強化ということにとどまらず、価値観や人生観といった人々の内面的な面にまで様々な影響を及ぼしたとされる。今回もまた、それぞれの場所から事態を見つめていた人々のコンセンサスとして、自らや自らの家族が勤務するオフィスの安全に対し、より一層敏感になるのは当然の帰結であろう。
元よりビルの安全は何より優先されるべきこと。大地震という黒船の来襲で巡ってきた「地震後」時代の中で、オーナーの舵取りが問われている。