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年60万人超来日する高度外国人人材 リロケーションサービスから見えるサービスアパートメント需要
2025.12.08 11:05
日本人の生産年齢人口の減少がつづくなかで、海外から来日して日本で働く外国人人材の数は増加を続ける。厚生労働省がまとめる「外国人雇用状況」によれば2024年10月末時点で過去最高の約230万人に達した。そのなかで高度外国人人材と呼ばれる「専門的・技術的分野の在留資格」を持つ外国人は約62万9千人となり、前年比20・6%増と在留資格別で伸びは最大だ。
企業はグローバルでの競争のなかで、国内外を問わず優秀な人材獲得を進める。政府もそうした動きを支援しており、2023年には一定の条件を満たすと追加の優遇措置を受けられる特別高度人材(J‐SKIP)制度を創設した。
一方、こうした外国人人材を受け入れるときにハードルとなるのが、企業側の受け入れ体制だ。業務だけでなく、ビザの取得や引越、住居の確保、生活に必要な契約手続きなど多岐にわたる。そういった業務を一手に引き受けているのが、エンプラス(東京都中央区)だ。
同社は2004年の創業以来、こうしたリロケーションサービスを中心に8000社以上の支援を行っている。加えて、短期滞在者向けのサービスアパートメントや1年以上の中長期滞在者向け仲介サービスも手掛けている。
同社は主に高度外国人人材を獲得する企業のサポートを行う。そうした外国人は年収水準も比較的高く、勤務する企業の知名度も高い。それでも賃貸で借りようとしても「外国人」であることだけで敬遠されてしまうことも多々あるようだ。同社のサービスアパートメントなどの住宅までをワンストップにしたサービスへの需要は強い。湯浅雄介社長によると「現在は約200社をクライアントとして、高度外国人人材の受け入れをサポートしている」という。
こうしたサービスアパートメントに対して、不動産活用の一策として検討するといったニーズも出ている。同社にもそうした引き合いは多く、大手不動産デベロッパーなどとも連携する。
湯浅社長によると物件は新築する場合もあるが、建替え前の定借で活用することも可能で、設備も家具のほかにキーボックスやリネンボックスなどあることが望ましいが、大きな改修などは必要ない。一方、立地は通勤の利便性からオフィスエリアに近接している地域が望ましい。こうした不動産活用について、同社としては条件がマッチすれば前向きに検討しているとのことだ。
増加する高度外国人人材。企業のニーズも高く、政府の支援も引き続き見込まれる分野だ。湯浅社長も感染症などさまざまなリスクを注視しながらも「今後数年は増加ペースは衰えないのではないか」と見込む。そうしたなかで「住居やビザだけでなく、生活や定着の支援全てをパッケージとし、企業のサポートをできるのが当社の強みだ」と話す。
不動産業界として言語の壁などアクセスしにくい需要に対して、どう取り組んでいくかは今後の成長戦略を練る上で問われる。



