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不動産協会 分譲マンションの短期転売抑制へ 購入戸数の制限などで投機目的の転売防ぐ
2025.12.01 11:33
不動産協会(東京都千代田区)は11月25日、分譲マンションの投機的短期転売を抑制するための取り組みを始めると発表した。
協会は分譲マンションの投機的短期転売に関する現状認識・基本姿勢をあらためて明らかにするとともに、会員各社に順次取り組みを開始すると告知。具体的には「(1)登録・購入戸数の上限制限」、「(2)契約・登記等名義の厳格化」、「(3)引渡しまでの売却活動禁止」を挙げている。各項目の内容は以下の通り。
(1)登録・購入戸数の上限制限=「1物件あたりの購入戸数を制限」し、かつ「1回の販売期(次)における登録可能住戸数も同様に制限」する(制限戸数は1戸の場合だけでなく、物件特性に応じて複数住戸の上限設定となる場合もある)。
(2)契約・登記等名義の厳格化=「登録(申込)名義にて契約、引渡し、所有権に関する登記を行うことを徹底」し、登録時確認書・売買契約書・重要事項説明書等に明示する。
(3)引渡しまでの売却活動禁止=「売買契約締結から引渡しまでの期間において、売却活動を禁止」し、登録時確認書・売買契約書・重要事項説明書等に条項を新設し、記載する。
なお、「対象エリア」、「対象物件」、「導入開始時期」、「制限戸数の設定」をはじめとする運用の詳細については、物件特性や各社の事情等に応じて、今後個社毎に判断を行う。また、協会会員各社は、それぞれ事業内容や事業実施地域を異にするため、特に対策を必要とする状況にないと判断される場合など、上述の対策を実施しない場合もあるとしている。
協会では、マンションの価格上昇は土地代や建築費などの「原価の高騰」に加え、供給戸数の大幅な減少に対して、若年層・子育て世代を中心として住宅購入意欲が依然根強いことによる「実需を基軸とした非常にタイトなマーケットの需給バランス」が大きな要因とし、投機的な取引の影響はごく限定的と捉えている。一方で「投機目的」の購入・短期転売については決して好ましいことではないとし、できる限り抑制するための対策が必要との認識を示している。
なお、住友不動産(東京都新宿区)、東急不動産ホールディングス(東京都渋谷区)、東京建物(東京都中央区)、野村不動産(東京都港区)、阪急阪神不動産(大阪市北区)、三井不動産(東京都中央区)、三菱地所(東京都千代田区)、森ビル(東京都港区)の8社は先行的に検討を開始し、対策の導入を決定している。
協会では、憲法に財産権の保障が定められており、私的財産の処分に関する権利への制限は慎重に考えなくてはいけないとしている。一方で、転売禁止の特約では所有権移転後の契約義務違反を把握できたとしても、「契約を解除して引渡しをしない」という履行を担保できる手段はすでに事業者にはなく、できることには限界があるとの考えを示している。



