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再開発断念や工事遅延、建設業の人手不足深刻化 長期化が懸念される中でシニアや外国人人材必須に
2025.06.02 14:10
業界で相次いでいる工期遅延や再開発見直し。建設費の高騰が原因となっており、その背景には人手不足や高まる人件費が挙がる。働き方改革関連法により時間外労働の規制が設けられて発生した「2024年問題」への対処は今なお続く。
先月27日、シニアに特化した求人紹介を行うシニアジョブ(東京都新宿区)と、外国人向けHR事業を展開するGuidable(ガイダブル、東京都新宿区)は「建設業の2024年問題対策」をテーマにオンラインセミナーを実施し、「外国人やシニアの活用は必須だが、それぞれに対応したサポートや支援が必要だ」という認識で一致した。
ガイダブルのマーケティング部・松井太輝マネージャーによると、建設業界の有効求人倍率は全業界のなかでも突出して高く、企業にとって採用難易度が高い状況が続く。令和6年の全体の有効求人倍率は1・25倍となったが、建設業単体でみると5倍超だった。この数字は10年前に比べても1・8倍ほど悪化している。賃上げも行われているが、業界横並びで求人応募の増加にはつながっていない。松井氏はこれらの状況を背景に「今後も長期的に厳しい傾向が続く」とみる。
一方、同社が得意とする外国人人材はどうか。23年末時点で建設業界で働く外国人は14・5万人に達し、22年だけでみても2・8万人増加しており「新規採用の1割は外国人」だという。建設業界の人材の一角を担う。
松井氏は「外国人は日本で働くうえで、仕事上でも生活上でもサポートが必要だ。たとえば、住居の契約や銀行口座開設でも企業側が可能な限り支援できることが長期的な定着につながる」と強調。日本人以上にコミュニティでの口コミへの信頼が強いことから「コミュニティで良い評価を得ることができれば一番の採用ブランディングにつながる」とも指摘した。
建設業界で存在感を大きくする外国人に対して、日本人のシニア層にも需要が集まっている。シニアジョブでも「2024年問題」への対応が集中した23年から24年にかけて建設業界からの需要が高まった。
同社安彦守人広報部長は「業界のなかでも、大型工事を伴う企業は早めに人材確保をしていたようだ」と話す。23年は土木やプラント工事に対応できる人材の就業が多く決定しており、この期間は60代の熟練者が中心となっていたようだ。24年に入ると、より幅広な採用が増えており、「60代に限らず、40代から70代まで幅広い採用が見られた」という。
安彦氏は松井氏の発表を踏まえながら「シニア人材は即戦力としてのニーズが強く、外国人は長期就業を視野に入れた採用が多い」と指摘する。
人手不足が継続するなかで、この課題を乗り越えるにはシニアや外国人にも門戸を広げることは必須となる。そのなかで、就業や定着につなげる条件提示やサポートが重要となりそうだ。