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三菱地所 「大手町ビル」大規模リノベーション完了 100年ビルへの挑戦

2022.05.30 14:26

 築古ビルをどうするか。建替えではなく既存ビルの利活用を考える時代になっている。三菱地所(東京都千代田区)は1958年竣工の「大手町ビル」の大規模リノベーション工事を完了した。「100年ビルへの挑戦」は、従来とは違うオフィスビルの存在意義を新たに確立する未来志向のリノベーションか。
 「大手町ビル」は日本有数の歴史あるビジネス街、大手町エリアに立つ地上9階地下3階、延床11万1272㎡の大規模オフィスビル。JR「東京」駅面前、山手線に並行する大名小路、丸の内仲通り、日比谷通りの3つの通りに面する縦200m、横幅50mの細長い形状が特徴。テナント入居はそのままに2018年5月より段階的に工事を進めてきた。
 今回の大規模リノベーションの特徴は、「外装デザイン等に3つの通りのストーリー性を反映」、「屋上にワークスペースや農園を整備、AI画像解析活用」、「共用ラウンジ・テラス開設」、「スタートアップ等、多様な企業が集積する拠点へ」といった、最新の技術を取り込み交流とイノベーション実現へ向けた様々な取り組みがあげられる。
 築64年を迎える「大手町ビル」を、新築高層ビルへの建替えではなくリノベーションに至った背景について、運営事業部統括の川岸浩之氏は、「既存ストックの活用という社会的背景から、既存ビル利活用となりました。スピーディーな開発により最新技術を取り入れやすいといった状況もあります」と語る。
 オフィスも数十坪の小規模サイズを設けバリエーションを増やしたことで小割貸付が可能になり様々なテナントニーズに対応する。
 約4000㎡の屋上空間「大手町ビルスカイラボ」ではAI画像解析を活用し利用状況・事象を検知・可視化する。緑あふれる広々としたワークスペース(157席)が設けられ、竣工時から屋上に安置されており年に1回ご開帳されていた「大手町観世音菩薩像(大手町観音)」は今回のリノベーションを機に一般来館者が参拝できるよう「大手町観音エリア」として専用スペースも整備。一般来訪者もアプリ登録により屋上利用が可能。
 また、新しい取り組みとしてスタートした約658㎡の屋上農園「The Edible Park OTEMACH by grow」は、約40種類がユーザー参加型で栽培されるという「シェアリング型IoT農園」。運営するプランティオ(東京都渋谷区)の専用アプリで日々の野菜育成状況を把握できる。ビジネスの可能性が広がる新たな形の大規模リノベーションの効果に期待が高まる。 

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