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ビルの空きフロアに舞台芸術家がスタジオ制作

2021.10.25 11:36

 演劇や映画、ドラマなどさまざまな舞台美術の企画・製作を行っている竹内良亮さん。10年ほど前からオーナーよりビルの空きスペースを賃貸し、事務所兼スタジオとして幻想的な空間「トコヨノモリ」を創り上げている。
 場所は京都市左京区。築30年以上経つビルの4階部分。オーナーが古物商を営んでおり、倉庫として使用していた。竹内さんが大学生だった12年前、学生劇団の舞台で使用する家具を探しに出入りする中で、信頼関係が生まれて賃貸するに至ったという。
 竹内さんは自身が表現したい空間を創ろうと2016年から2年かけて制作。「追いかけられて森の中へ逃げる悪夢を見続けた時期があった。恐いけど近付いてみたい。そんな臨死体験をしているかのような、常世の森を再現した」と話す。制作はすべて1人。木はダムの流木を自ら拾いに行き、葉や石は本物とイミテーションを混ぜ込み、森を実現させている。
 「トコヨノモリ」をスタジオとして時間貸しを実施。コスプレイベントや映画、朗読会などに活用されている。要望があれば、音響、照明などコンストラクションに差をつけて提供している。竹内さん自身がスタッフとして常駐するため不定期だが2022年以降、受付する予定だ。利用料金は3時間3万5000円(税込)。利用時間は10時から21時の間としている。
 竹内さんの独創的な空間演出を生み出せる原点は大学時代にあった。京都大学在学中に学生劇団に所属しており、舞台美術に関する専門教育を受けようとロンドンのミドルセックス大学に留学した。さらに現地の舞台美術家のアシスタントとしても活動したという。「1つのやり方ではなく色々なやり方があることに刺激を受け日本に帰ってきた」(竹内さん)。帰国後、舞台美術などのイベントを行うユニット「伝舞企画」を発足。吉岡里帆さんなどが出演した京都大学西部講堂での公演「Desperado Party ザ・ラストオーダー」を実行するなどしている。
 依頼があれば「トコヨノモリ」のような空間の企画や製作を請け負うという。このような独創的で唯一無二の空間創りが遊休不動産の活用となるだろう。

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