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三井不動産/青木茂建築工房などが共同開発 躯体を再利用する「リファイニング建築」CO2削減効果は新築比で72%

2021.09.27 11:40

 三井不動産(東京都中央区)は、既存躯体を再利用して新たな建物を構築する「リファイニング建築」のCO2排出量削減効果について結果を発表した。
 今回の評価は青木茂建築工房(東京都渋谷区)の協力のもと、東京大学(東京都文京区)新領域創成科学研究科の清家剛教授と共同研究を実施。リファイニングする場合と新築する場合とのCO2排出量を調べた。調査は、三井不動産が青木茂建築工房と計画しているリファイニング建築計画を対象にCO2削減効果を検証した。結果、既存躯体の約84%を再利用することにより、既存建物を同規模に建替えた場合と比較しCO2排出量を約72%削減できることが判明したという。
 対象物件は、東京都新宿区にある築49年の賃貸共同住宅(旧耐震基準)。SRC造・RC造、地上9階、延床面積約2610㎡の同物件をリファイニング建築により再生する計画で、建物寿命を新築同等とするため、躯体の調査、補修を実施したうえで耐震性能を現行法規レベルまで向上させる。また、竣工後の運用時エネルギーも新築同等とするため、サッシ交換や断熱改修などを実施する。
 一般的に既存建物を解体し新たな躯体建設を行うと、調達される鉄やセメントなどの建築資材の製造時に多くのCO2が発生する。リファイニング建築は既存の躯体を再利用するため、建替えに比べてCO2排出量の大幅削減が可能となる。
 今回の共同研究では、建築における「製造」、「運搬」、「施工」の段階のうち、最も削減効果が大きい「製造」段階に注目。リファイニング建築時に使用される建築資材の量を算出し、資材の製造時に排出されるCO2排出量を試算した。建替えの場合も同様に算出して比較することで、同建築手法の削減効果を検証した。
 その結果、建替えの場合は躯体の資材製造に伴うCO2排出量が1761tなのに対して、リファイニング建築の場合は既存躯体の84%を再利用するため、躯体の資材製造に伴うCO2排出量は40tと見積もられた。建替えの場合と比べ、全体でCO2排出量1721t(約72%)の削減効果があることが判明した。
 三井不動産は、リファイニング建築が脱炭素社会に向けたソリューション提案の一つとなり得ることが同研究により明らかになったとしている。

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