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コロナ禍のリーシング事情 好業績企業からの物件需要底堅く コロナ禍で生まれた新業態も借り手に

2021.02.15 12:36

 外出自粛や三密回避から飲食店などを中心に影響が拡大した2020年。一方で、新規出店を行ったケースも少なくない。テナントショップ社長の水野清治氏は「過去経験したことのない市場構造の変化」が起きていると話す。

 テナント物件専門のポータルサイトを運営するテナントショップ(滋賀県草津市)は3日、コロナ以前の2019年と、コロナ禍の2020年でのテナント需要をデータ化。2019年に比べて2020年はコロナ不況で苦境に立たされる業界があるなか、新たな事業を立ち上げるためのテナント物件の問い合わせ数(反響数)が大きく伸びて、12月単月では前年対比170%増となっていることがわかった。
 同社代表取締役の水野清治氏は「お問い合わせの件数は昨年の緊急事態宣言が解除された5月から12月まで連続して前年を大幅に上回りました」と明かす。
 業種業態も多様だ。ダメージを受けている飲食店においても「テイクアウト型・宅配店等のローコストオペレーションへの変化、かつ初期投資を抑えられる物件のニーズの高まり、また大きな事業所を狭小区割りしての利用への移設・増設変動だと思われます」と話す。
 加えてドラッグストアを中心とする郊外物販店への新規出店意欲の高まり、地域によっては学童・保育所向けの物件の引き合いが昨年夏から秋にかけて問い合わせ件数が過去最高だったという。  水野氏は「各社決算の結果、好不調の明暗がより鮮明となっています。そのなかで好調な企業が投資に目を向けるのは当然の流れだと思います」と指摘する。「テナントショップ」好調の要因については、「移動の自粛などの影響も受け、『インターネットで検索をする』というプロセスが一段と定着してきたのでは」と分析した。
 コロナ禍が直撃した2020年は明暗がはっきりと分かれる結果となったようだ。では今年、2021年はどうだろうか。「テナントショップ」では今回のコロナ禍を「過去経験したことのない市場構造の変化」だと定義しているという。そのような市場構造の変化は法律の改正などによっても引き起こされてきた。水野氏は次のように振り返る。
 「例えば2007年の道交法改正で飲酒運転の罰則が強化されてロードサイドの居酒屋が激減し、駅周辺に集中していきました。貸金業法の変化も駅前から貸金店舗の激減につながっています。そして最近ではネットフリックスをはじめとするビデオオンデマンドのサービスの充実、昨年春の外出自粛などによってレンタルビデオ店の閉店ラッシュにつながっています」
 コロナ禍は既存の業種業態を苦境に陥らせているものの、新しいビジネスモデルが生まれるきっかけともなっている。水野氏は、そのような新しい需要を背景にして「2021年の商業、店舗などの物件への需要はより一層活発になるのでは」と語った。

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