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ストライク 住宅・不動産業界の2020年のM&A コロナ禍の中、件数は最多になるも金額は4番目

2021.02.01 10:52

 住宅・不動産業界の2020年のM&A発表件数は35件で、2011年以降の10年間では2019年と並んで最も多かった。新型コロナウイルスの影響で経済活動が制限される中、低金利による金余り現象で件数が増加した前年の勢いが持続した格好だ。
 ただ取引金額は約1043億円で、2011年以降の10年間では2019年、2016年、2015年に次ぐ4番目に留まった。上位3年に共通する500億円を超える案件が無かったため金額が膨らまなかった。
 全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(東京都千代田区)が集計した。
金額トップは住友不の456億円
 金額のトップは住友不動産が6月12日に、中国でマンション開発・分譲を手がける子会社の大連青雲天下房地産開発有限公司(大連市)の全出資持ち分(75%)を、合弁相手の大連億達管理諮詢有限公司に譲渡した案件で、譲渡価格は30億3000万人民元(約456億円)。
 大連青雲天下房地産開発は2013年に設立。大連市内で2800戸規模のマンション開発・分譲に取り組んできたが、合弁相手から合弁解消の申し出があったという。
 金額の2番目はオープンハウスが11月13日に、投資用マンション事業を手がけるプレサンスコーポレーションに対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した案件で、買付代金は最大約367億円。
 オープンハウスはプレサンス株式を31・82%保有する筆頭株主で、TOBを通じて株式を追加取得し、持ち株比率を60%強に引き上げる。TOBは2021年1月14日に成立した。
 プレサンスは1997年に大阪市で設立。関西圏を地盤に投資用マンションの開発分譲を展開し、ファミリーマンションも手がける。新型コロナウイルス感染症の拡大で経営環境が厳しさを増す中、資本関係を強化する必要があるとして子会社化に踏み込むことにした。
 金額の3番目はサムティが昨年12月21日に、ベトナム子会社を通じて、住宅分譲事業を手がける現地S―VIN VIETNAM REAL ESTATE TRADING(S―VIN、ハノイ)の株式90%を取得し、子会社化することを決めた案件で、取得価格は約147億円。
 S―VINはベトナム最大の不動産開発会社VINHOMES(ハノイ)の傘下企業で、ハノイで計画されている大規模複合開発プロジェクト「ビンホームズ・スマートシティ」で分譲住宅4棟の開発許可を取得済み。
 サムティはベトナム国内での不動産開発事業を計画してきたが、新たに土地の選定、開発申請を行うより、同プロジェクトですでに開発許可を持つS-VINを買収する方がベトナム事業の早期立ち上げにつながると判断した。

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