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民泊をシェアオフィス付き賃貸に 9月に完成、オフィス不足の京都で

2020.10.19 11:35

 コロナ禍にて訪日観光客の激減が不動産活用にも大きな影響を与えている。そのなかで台頭しているのが地域のニーズに応じた物件の活用プラン。1つのケースを不動産コンサルティング企業のいろは(東京都品川区)が京都でつくった。それが9月28日に完成したシェアオフィス併設アパートメント「iroha + Nijo」だ。

 この物件は昨年まで民泊物件として運用していた。しかし、民泊運用を代行していた企業が業績不振によって運営が暗礁に乗り上げた。結局、オーナーの手元に返ってきた物件だった。
 代表取締役の三浦剛士氏のもとには前もって相談があった。「あまり民泊としての運営がうまくいっていないようだ、ということは聞いていました。私も万一のことを考えておいたほうが良いですよ、とアドバイスしていましたが、その矢先に民泊が行き詰まることになりました」。この時点でオーナーは売却という選択肢もあったが、所有し活用し続けていくことを決断した。
 いろはで物件プランニングを考えるうえで、最初に検討したのは賃貸だった。民泊から賃貸物件への転用は行いやすい。最近では将来の転用を前提にした開発物件もある。
 ただ周辺の家賃相場がハードルとなった。「単身者用の賃貸物件の場合、相場は月額3~4万円の物件がほとんどです」(三浦氏)。その金額では物件の投資額やリニューアル費用などを合わせると、割に合わない。そこで構想したのが、シェアオフィス併設型のアパートメントだった。
 構想段階では「コロナ禍」は想定外だった。「京都はオフィス不足という事情があります。『iroha + Nijo』は登記も可能なので、ここを起業などの拠点として利用してほしいという思いがありました」(三浦氏)。コロナを経て、テレワークや在宅勤務などが広がり、課題となっているのはオフィス以外のワークスペースの確保。この物件はそのようなニーズにも応えることができそうだ。
 物件は2階建て。1階1室部分をシェアオフィスに改装。2階部分は居住スペースとなる。シェアオフィスは入居者専用とする。三浦氏はこのようなシェアオフィス付きの物件について「このアイデア自体はそれほど珍しいものではありません」と話す。利回りが急速に悪化した民泊などの転用のプランニングとしても真似することは難しくない。
 ただ「ハードを真似されるのは織り込み済み」(三浦氏)。同社が「iroha + Nijo」の特色として据えるのが、コミュニティマネージャーの配置だ。
 同物件のコミュニティマネージャーとなるのが沼田竜也CCO。公務員を経て、飲食店の開業やイベントの主催など多彩な経歴を積む。社内では、分散型民泊「Kamon Inn」の番頭を務める。
「今回の『iroha + Nijo』では入居者とシェアオフィスの利用者は重なっています。物件内で互いに仕事を回せるような仕組みづくりをしていきたいです。またターゲットとなる入居者は起業したてのスタートアップなどになると思います。私自身事業を起こした経験があるので、資金調達や事業展開などの相談にも乗っていきます」(沼田氏)
 同社が提案するこれからの不動産活用は、人を介したソフトサービスつきの物件提供。その成否を見守りたい。

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