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不動産価格指数「Daily PPI」日次で即時性の高い指標提供

2020.06.15 17:22

株式など他の金融資産との比較を容易に オルタナティブアセットとしての地位確立
 「みんなの株式」などを展開するミンカブ・ジ・インフォノイド(東京都千代田区)のグループ会社で、Jリート情報ポータルサイトの「JAPAN REIT.COM」を運営するProp Tech plus(以下PT+、東京都港区)は4月21日から新不動産価格指数「Daily Property Price Index(Daily PPI)」の提供を始めた。これまでブラックボックスと化していた不動産価格の騰落が日次の指標として提供されることで、金融・ファンド関係者の不動産マーケットへの参入や投資家層の裾野の拡大につながりそうだ。

 新不動産価格指数「Daily PPI」は、東京大学空間情報科学研究センター不動産情報科学研究部門が監修し、三井住友トラスト基礎研究所(東京都港区)、東京海上アセットマネジメント(東京都千代田区)、PT+が共同で開発した。Jリートの投資口価格やバランスシート(貸借対照表)などの情報を活用して、Jリートが保有する実物不動産の価格を算出し、統計的な手法を用いてモデル物件を標準化した上で指数化している。従来の不動産価格指数は鑑定評価ベースが中心だったが、「Daily PPI」は金融市場の評価を加味した不動産価値を日次の時系列で表現している。
 算定指数はオフィスビル、住宅、都市型商業施設、物流施設、ホテルの5つのアセット。それぞれのエリアはオフィスビルと住宅が主要5区・東京・地方7大都市、都市型商業施設が東京・地方7大都市、物流施設が1都3県、ホテルが東京となる。有償のサービスとして提供し、利用者には毎月中旬に前月末までの算定指数をデータで送付する。
 Jリートの指数としては東証リート指数がある。これは投資口価格の指数だが、今回の「Daily PPI」は不動産価格にフォーカスしたアプローチを可能にする。PT+のREIT事業本部長の土井敏宏氏は「日次でのデータを提供することで、不動産価格のベンチマークとして他の金融資産と比較することが可能になります」とする。データを用いることでリスク管理や投資家への説明の際に運用の根拠を示すことができるため、金融やリート、私募といったファンドのAM会社などの利用を想定する。
 不動産マーケットの安定化にも寄与する。「Daily PPI」の開発に携わった三井住友トラスト基礎研究所投資調査第1部副部長の菅田修氏は「不動産マーケットのセンチメントを現す指数と捉えることもできます」と指摘する。これまで不動産価格のボラティリティを定量的に把握できる指標がなかったため、幅広いプレイヤーの市場参加が期待しにくかった。「Daily PPI」は、この問題を解決するツールの一つとなり得る。「多くのアナリストが利用すれば、株価などの指数と同様に、将来的には不動産価格の先行指標としての活用も期待されます」とも話す。
 投資家層の裾野の拡大も期待される。菅田氏が5月12日に同社のHPに発表したレポート「Daily PPIから読み解く2020年3月の不動産価格の変動―Covid‐19の影響―」によると、今回のコロナ禍の相場でも住宅や物流などでは早い回復が見られた。同レポートでは、こういったプロパティタイプ別の動向に違いが生じていることも言及されており、タイプ別のパフォーマンスの違いを把握するのにも役立つ。
 「今後、他の金融資産の指数との関係性が分析されるケースも増えてくるだろう。そうなれば、オルタナティブアセットとしての不動産がより一層、注目されるきっかけになることが期待される」と展望を示す。今後「Daily PPI」を活用したレポートをリリースするなどして認知度の向上と幅広い活用につなげていく。

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