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民泊市場主役交代 回復の担い手は企業に

2019.11.11 12:30

「180日」縛りがネック
 上場不動産企業の民泊事業への参入が相次いでいる。昨年の住宅宿泊事業法(民泊法)施行により大手仲介サイト「Airbnb」の登録件数は激減した。一方、民泊法に基づく届け出件数は2万件を超える。この民泊物件数回復の主役を担うのが企業だ。厳しい民泊ルールがあるなかで、彼らの収益化への戦略が注目される。

 国内の民泊施市場が回復傾向にある。
 2018年6月に住宅宿泊事業法が成立。特区などを除いて、営業日数は年間180日と制限された。新法施行前の主要プレイヤーだった多くの個人投資家は、インバウンドを中心に宿泊需要が増すなかで365日運用できることに妙味を覚えていた。がその旨味が半減することから、多くが撤退の決断を余儀なくされた。
 逆に、企業が所有物件などを民泊として活用する事例が増えている。直近でも上場企業のリーガル不動産やアズ企画設計などが参入。また丸紅と丸紅リアルエステートがアパマンの連結子会社で民泊事業を行うグランドゥースの株44%を取得した。更には11月初旬に「大阪メトロ(大阪市高速電気軌道、大阪市西区)がホテルなど宿泊施設に市場に参入。第1弾として2021年2月の開業予定で、大阪の観光エリアである新世界に近い場所に民泊用マンションを開発する予定」と伝えられた。
 大手資本が参入する民泊市場。その勢いは統計にも表れている。
 観光庁が発表する「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況」では10月10日時点で、住宅宿泊事業の新規届出件数は2万911件。事業廃止件数は1805件。昨年の法律施行時は2210件だった。届出件数ベースでは10倍近くになっている。施行前は大手仲介サービスの「Airbnb」に6万2000件もの物件が掲載されていたことから考えると、3分の1ほどで推移している。が回復傾向にはあることが読み取れる。
 個人投資家が去って、企業が増えた理由はなぜか。見えてくるものは2点。「大手資本の目利き力」と、「新法の縛りの厳しさ」である。
 例えばたとえばリーガル不動産では大阪市浪速区に、民泊専用ビル「LEGALIE日本橋東」を開業している。IR担当者は「当社の民泊事業は自社所有の収益マンションの一室からスタートし、実績を積み重ねてきました」とした。大阪市は国家戦略特区法の「特区民泊」に指定されているため、「180日」ルールに縛られない。稼働率は「8~9割」で推移しており、既に「2棟分の土地を取得済み」だという。これらも特区内の効果を勘案したものだろう。
 アズ企画設計では数年前より東北でホテル事業を展開している。そのノウハウを生かし「事業領域・業容の拡大」を狙って民泊に参入した。東京「上野」駅至近の1棟の賃貸マンションを宿泊施設にするという。「365日営業が可能な簡易宿所としての運営を考えております」という方針。「180日」ルールを回避する展開だ。  政府は2020年に4000万人の訪日観光客を見込んでいる。達成可能とする見方が支配的だ。その先の目標として2030年には6000万人と算盤をはじいている。
 民泊市場を考えるうえで、ホテル客室数の増加も見定めておく必要があろう。  周知の通りホテルの開発は目白押し状態にある。厚生労働省が発表している「平成30年度衛生行政報告例」によると「旅館業」が昨年度末で8万5617施設(前年比4・2%増)、そのうち「旅館・ホテル営業」は4万9502施設(前年比1・0%増)となっている。平成29年度までは旅館営業とホテル営業は区別されていたが、平成30年度からは「旅館・ホテル営業」として統合。実質ホテルの数が増えていると説明される。また「簡易宿所営業」は前年度比で9・2%増の伸びとなっている。
 首相官邸で2018年11月30日に開催された「第11回シェアリングエコノミー検討会議」でヒアリングを受けたAirbnb Japanは、今後の課題として「個人には(新法の)ハードルが高く、収益性を勘案すると採算が合わない」として規制緩和等の必要性を訴えている。
 が現行法下での新しい民泊市場の形成は、資本力を有する大手不動産など企業が主役となっていく流れが見て取れる。


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