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「住友不動産秋葉原駅前ビル」竣工 秋葉原エリアにワンフロア340坪

2019.10.15 14:46

安心安全にも配慮、避難できるビルに
駅前の木密是正とオフィス供給を両立
 住友不動産(東京都新宿区)が地権者並びに参加組合員として参画する「神田練塀町地区市街地再開発組合」は10月7日、「住友不動産秋葉原駅前ビル」が竣工し、本格稼働を迎えたと発表した。
 同事業は、JR「秋葉原」駅前の北東200mに位置する約0・5haの街区で事業推進してきたもの。これまで細い街路沿いに旧耐震基準の建物や低層木造家屋が密集していた敷地の統合と、建物共同化による土地の高度利用を目指したものだ。区画道路や広場などの整備を行い、防災性の向上、地域活力の増進、市街地環境の改善を図ったオフィス、住宅、店舗で構成される総延床面積約3万700㎡の大規模複合開発である。
 建物1階には広場状の空地を設けて賑わいを創出したほか、有事にはエントランスホールに就労者や観光客などを受け入れて秋葉原一帯の災害拠点としても機能する。
 「秋葉原」駅前は2004年以降に土地区画整理事業に伴う駅前再開発施設が次々と完成し、業務・商業・住宅・文化などの多機能を有した街へと大きく発展。特に「東京」駅より2駅の立地と、JRや地下鉄、つくばEXなどが乗り入れる優れた交通利便性を持つことで、高いオフィスニーズを有している。こうしたなか、同ビルは駅前に集積するビル群の中でも、先進的な構造、設備、規模を誇る大規模複合ビルとして注目を集めている。
賑わいを創出し防災にも貢献
 同エリアは多くの人で賑わう駅前エリアに位置しながら、街区内の歩行者動線が未整備であり、電柱や電線類が残り景観も損なわれていた。とりわけ中通り(東側区道)は、人通りも少なく沿道の賑わいが不足。今回、景観と共に駅前や昭和通り方面より人の流れを呼び込み、賑わいを生み出す動線を確保した。そのために、駅前から街区へ人の流れを誘導するルートとなる公共の「ゲート広場」を設置。併せて地区周辺道路の電線類の地中化を図り、歩道状空地の整備なども行うことで、安全で快適な歩行者空間を整備した。
 同時に地域の防災機能向上にも貢献するため、北側広場にはマンホールトイレや防災井戸の設置場所を確保。さらに、災害時に地域の一時退避スペース(ピロティ)として利用でき、防災活動の場としても使える約370㎡の広場を設置した。エントランスホールにおいても、帰宅困難者などを受け入れる約200㎡の一時待機スペースを確保。建物2階には防災用備蓄倉庫も設け、災害時に役立つ公共性にも力を注いでいる。
地震や停電にも強い安全対策が充実
 同ビルでは安心安全なオフィスビルを目指し、建物3階下部に免震装置を設けて揺れを吸収。屋上には制震装置を設置することで揺れを低減している。中間免震構造で建物上部に直接地震エネルギーを伝えにくくすることで、人命はもとよりオフィス内の家具などの転倒リスクも軽減している。
 また、万が一の災害を想定し、3回線(本線予備線)受電方式を採用。仮に送電線が1本切れた場合でも他の2線から受電する。さらに、中圧ガス、重油の双方を使用して発電できる非常用発電機(デュアルフューエルガスタービン)を設置。発電所からの送電がストップした場合でも、中圧ガスを使用した最低10日間の発電、中圧ガス供給が止まった場合には、ビル内に貯蔵している重油により72時間分の発電が可能だ。提供公共性を兼ね備えたビルとして、複数の災害対策による安心と安全を提供する。
 同ビルは都心3区の一つである千代田区内で、複数路線が結節する秋葉原に位置している。「秋葉原」駅をはじめ徒歩6分圏内には全部で5駅所在し、7路線が利用可能。東京、新宿、渋谷、品川など都心主要エリアをはじめ、東西南北へスムーズな移動が可能。
利便性の高い大規模オフィス
 この圧倒的な交通利便性を背景に、同ビルは都内で不足するオフィス需要にも対応。2階から17階は、快適な就労環境を実現する各種設備、機能を備えたオフィスフロアとなっている。基準階面積は、秋葉原エリアで有数の規模である約340坪(約1120㎡)の広さを誇り、かつ整形無柱空間とし、効率的で様々なオフィススタイルに適応する自由なレイアウトが可能だ。加えて天井高3m+フリーアクセス10cmのゆとりある空間を確保。空調はワンフロアをゾーン分けし、部分制御可能な個別空調システムで省エネを実現した。
 重厚感ある外観で目を惹くそのファサードは、新たなランドマークタワーとしての存在感を示す。公共の場として、商業やビジネスの場として、内外からの観光の拠点として、新たな可能性が生まれ始めている。

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