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エスエイチユー バイオの力で「におい」の問題解消

2019.09.16 11:57

「新宿三井ビル」などで導入実績伸ばす
 ビルの地下フロアに飲食店舗が入居する例は一般的であるが、こうした店舗内の厨房やトイレなどは下水道管より低い位置にあり自然排水ができない。このため地下フロアで発生した排水は一時的な貯留を行う排水槽(ビルピット)に運ばれ、その後ポンプによって地下から汲み上げられ下水管へと送られる。排水槽は定期的な清掃を行うことで悪臭の拡散を予防するのだが、これを怠ってしまうと排水槽内に汚泥がたまり、悪臭の原因となる硫化水素などの発生を引き起こしてしまう。これに対し、エスエイチユー(東京都新宿区)では土壌や河川から抽出したバイオ(微生物)を独自開発した消臭剤「バイオクリーンズ」を手掛け、飲食店舗が入居するビルや飲食店などに数多くの納入実績を有している。その一つが、三井不動産(東京都中央区)が運営する「新宿三井ビルディング」である。
 「新宿三井ビルディング」は、東京・西新宿の高層ビル街の一角に建つ地上55階地下3階建ての大規模ビルで、多くの企業がオフィスを構えるとともに地下フロアには各種飲食店舗が入居している。同ビルには地下駐車場の更に下に3カ所の雑排水槽が設けられており、地下フロアで発生した排水が一旦送られ、その後下水道管へ送られる仕組みとなっている。ビルの管理運営を担当する三井不動産ビルマネジメント(東京都中央区)の川上潔氏は、同ビルで起きた「におい」の問題について次のように話す。
 「5カ所の雑排水槽のうち、特に1カ所で強い異臭を感じるようになりました。この異臭を抑えようと『バイオクリーンズ』の導入を検討しました」
 東京都では排水槽の維持管理に関する指導要綱を定めており、それによれば排水槽内の硫化水素濃度は10ppm以下であることが望ましいとしている。一方、「新宿ビルビルディング」では一時、適正値を大幅に超えたこともあったという。
 「各飲食店舗の厨房には、排水槽に送る前の排水から油脂分やごみなどを分離するための『グリストラップ』が設置されています。各店舗がグリストラップを定期的に清掃していればこれほどの異常は起きません。ある店舗がグリストラップの清掃を怠ったことで、排水槽の水質が急激に悪化し、異臭を放つようになっていました」(川上氏)
 同ビルでは2017年7月から「バイオクリーンズ」を試験的に導入。店舗から発生する排水を浄化することで、排水槽の浄化を実現する方法を提案した。
 「バイオクリーンズ」の導入後、排水槽内の硫化水素の数値は劇的に減少。導入から数カ月後には東京都が適正値とする10ppmを下回る数値にまで排水槽の浄化を達成することができた。
 「店舗のグリストラップへの導入は、異臭の原因となっていた店舗から試験導入され、その後ほかの店舗にも順次導入。現在では同ビル全ての飲食店舗に設置されています」(川上氏)
 更には「バイオクリーンズ」による効果について、次のように話す。
 「排水には硫化水素など、配管や排水槽の劣化を早める物質を含んでいます。『バイオクリーンズ』を導入することでこれらの物質を抑制し、悪臭を元から断つ効果だけではなく、配管や排水槽の劣化を予防し、長寿命化の実現にもつながります。配管の更新コストの削減にも効果があり、長期的な視点からも効果の高い商材であるといえます」
 現在この「バイオクリーンズ」は、三井不動産保有の物件では「東京ミッドタウン」、「霞が関ビル」、「汐留シティセンタービル」などでも導入されている。小林氏は「バイオ(微生物)の種類によって得られる効果が異なってきます。導入するシチュエーションに応じた商品を展開し、『バイオクリーンズ』の導入を今後も進めていきたいと思います。この商品の大きな特長は自然界に存在するバイオ(微生物)を素材としていることで、環境への負荷がなく、店舗や建物の衛生環境を改善するだけでなく、地球環境の改善にも貢献できる商品です」と意気込みを述べている。

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