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三菱地所が中小ハイグレードオフィス事業に本格参入

2019.01.15 14:13

新ブランド「CIRCLES」で成長企業狙う 5年で30棟計画、今年中に3棟竣工へ

 三菱地所(東京都千代田区)が、中小規模サイズのオフィスビル市場に本格参入する。昨今、大手オフィスデベロッパー各社が力を入れる分野で、市場の成熟に一層の拍車がかかりそうだ。

シェア、コワーキングを卒業した企業を想定
 新たに展開するオフィスビルのブランド名は「CIRCLES(サークルズ)」。シェアオフィスなどのスモールオフィスが手狭になった成長企業をターゲットだ。高いデザイン性と快適性を兼ね備えたコンパクトオフィスシリーズとして開発し、賃貸事業を強化する狙い。
 事業は敷地面積100坪前後の土地に、1フロア30~100坪前後のコンパクトオフィスビルを新築し、基本的に1フロア1テナントとして賃貸する。東京都心5区を中心としたエリアに年間3~5棟程度を新築する計画で、5年間で30棟を開発目標としている。
 すでに複数の計画地で用地取得が済んでおり、第一弾として「(仮称)港区東新橋二丁目計画」「(仮称)中央区銀座三丁目計画」「(仮称)中央区日本橋馬喰町一丁目計画」の3事業が着手されている。
ラウンジや会議スペース「サークル」を生む仕掛け
 ハード面での特徴としては、屋内にありながら屋外のような開放感を感じることができる「インナーバルコニー」や、屋上バルコニー、入居テナント専用のミーティングスペース、ラウンジなどを設置。入居企業同士などさまざまな「サークル」を生む施策を取り入れる。また貸室は家具付きフロアや独自の内装に仕上げられるフロアなどを用意し、入居企業の多様なニーズに応える。さらに窓を開放可能とするほかパッケージ空調を採用し、生産性を上げる空気環境を目指した。
 IoT、ICTも積極的に導入する。照明や空調の操作、会議室やラウンジの混雑状況把握にはIoTを活用した独自のシステムを構築。テナント専用のサイトから、タブレットなどで操作が可能とした。
集まって働く重要性テレワークで再認識
 三菱地所ではCIRCLESのシリーズ展開の背景として、サービスオフィス等が普及する一方、サービスオフィス等が手狭になった成長企業にとって、生産性向上に有効なデザイン性と快適性を兼ね備えた中小規模オフィス空間の選択肢が少ないという現状を挙げる。その一方で、テレワークやサテライトオフィス、コワーキングスペースの普及等、固定の場所や時間に縛られない働き方が普及してきたからこそ「オフィスに集まり一緒に働く時間の重要性」が高まってきているとし、CIRCLESを「集まって働くこと」の生産性や快適性向上をサポートする空間を充実させたコンパクトオフィスビルシリーズと位置付ける。その上で、サービスオフィス等が持つ多様な共用空間、創造的なデザイン性と、ワンフロア占有可能なコンパクトオフィスが持つ高度なセキュリティ等特性を両立させ、成長企業等に最適なオフィス空間を提供するとしている。
 三菱地所は今後も、大規模再開発に適さない土地や、耐震に問題がある建物の建替えなど、中小規模敷地においても様々なバリューアップに取り組み続けるとしている。
 なお今回事業に着手した3件の建物概要は以下の通り。
 (仮称)港区東新橋二丁目計画:敷地面積約265㎡、延床面積約1487㎡、鉄筋コンクリート造地上9階、2019年8月竣工予定。
 (仮称)中央区銀座三丁目計画:敷地面積約291㎡、延床面積約2176㎡、鉄骨造地上10階、2019年11月竣工予定。
 (仮称)中央区日本橋馬喰町一丁目計画:敷地面積約272㎡、延床面積約1992㎡、鉄骨造地上11階、2019年12月竣工予定。

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