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ヒューリック 高級旅館開発を本格化 カトープレジャーとの共同事業

2018.10.01 17:26

 宿泊施設開発の勢いが止まらない。少子化で減少する不動産ニーズを補い、外国人観光客を取り込んで成長につなげるのが目的だが、そこに高級温泉旅館をぶつけてきたヒューリック。その戦略とは。

外国人やシニア狙うスモールラグジュアリー
 10月1日、ヒューリック(東京都中央区)が所有する高級温泉宿泊施設「ふふ 河口湖」が開業した。運営は全国各地でリゾート施設などを展開するカトープレジャー(東京都千代田区)が行い、経営実務は両社が出資するヒューリックふふ(東京都中央区)が行う。
 「ふふ 河口湖」はスモールラグジュアリーをコンセプトとし、部屋数は全32室と小ぶりながら宿泊費を9万円台から27万円台に設定。立地や部屋の設え、アメニティ、料理、温泉など全てにこだわった温泉旅館だ。河口湖でのカヌー体験や星空観察会、トレッキングなどのアクティビティも充実させ、外国人観光客や購買力の高いシニア層を狙う。
 ヒューリックふふが運営する宿泊施設としては「箱根・翠松園」「熱海 ふふ」「ATAMI 海峯楼」に続く4施設目で、ヒューリックではふふブランドの全国展開へ向けた新たな一歩と位置付ける。

オフィス収入は減少へ のビル観光で成長を期す
 ヒューリックでは現在、収入の70%を賃貸オフィスから得ている。みずほ銀行系の強みを生かし、立地の良い銀行店舗を中心に再開発をすすめて業績を伸ばしてきたが、このまま人口減・高齢化が進めばオフィス需要も鈍る。高橋則孝常務取締役は「いずれは賃貸オフィスの売り上げを50%ほどに抑え、成長の見込める他分野を伸ばして全体を成長させる」と話す。なかでも高齢者、観光、環境を「3K」と名付け、成長分野の主柱に据える考えだ。
 その一つである観光は、宿泊施設に置き換えられる。ヒューリックが宿泊施設から得る収入は現在では全体の8%ほどだが、これを15%に伸ばす構想という。宿泊施設のビジネス戦略としては「自社運営」「ホテル投資」「日本ビューホテルへの出資」「高級温泉旅館」の4つにカテゴライズし、ふふブランドは高級温泉旅館分野を担うこととなる。

数年中に10施設300億円の投資
 国内の宿泊市場におけるふふブランドの立ち位置は明確だ。ヒューリックではふふブランドが狙うニーズを「インバウンド」と「高齢層の購買力」に絞り、カトープレジャーではふふブランドを「世界のどこにもにない日本リゾート」として開発した。カトープレジャーの加藤友康CEOは「他にはない施設。その魅力を世界に向けて発信していく」と話す。
 ヒューリックとカトープレジャーでは今後も熱海、日光、奈良、京都、強羅などに計10件程度のふふブランドの温泉宿泊施設を開発する予定で、うちいくつかの計画が具体化しつつある。開発投資額は300億円規模としている。
 「ふふ 河口湖」は地上2階建てのロビー棟と4階建ての宿泊棟からなり、延床面積は4670㎡、敷地面積は1万7780㎡。

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