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いちご ライフスタイルホテルと日本へ 「THE KNOT」新宿で開業

2018.08.13 14:14

ブルオーシャンの開拓目指す
 ホテル供給が続くなかで、各社「体験」や「グループ宿泊」などを軸にして差別化を図る。新宿に新ホテルをオープンするいちごが繰り出したのは「ライフスタイルホテル」。ホテルの新トレンドが誕生した。

訪日客予想上振れ上半期15%増で推移
 いちご(東京都千代田区)は今月8日「THE KNOT TOKYO Shinjuku」をオープンした。昨年12月の「THE KNOT YOKOHAMA」に続く2号目。2016年9月取得の「新宿ニューシティホテル」を改装してのスタートとなった。THE KNOTというホテル名には、街の歴史や文化、その街で生活する人、訪れる旅人、これらの結び目(KNOT)でありたいという想いが込められている。
 業界ではアセットとしてのホテルの魅力は高まり続けている。
 日本では2012年に東京オリンピック・パラリンピックの2020年開催が決定した時同じくして、訪日観光客数が年々増加。2017年は約2800万人が訪日。JTB(東京都品川区)が昨年12月に発表している「2018年の旅行動向見通し」では訪日観光客数は3200万人と予測。2017年比12・3%増を見込む。
 現実はこの発表を上回りそうだ。先月18日の日本政府観光局の発表によると上半期で1589万9000人が来日。2017年と比べ15・6%増で推移している。大阪府北部地震や先月の豪雨の影響は注視したいが、現状市場予測を上回る数字となりそうだ。ホテル需給も引き続き逼迫しそうだ。

日本に新トレンドを 差別化で台頭狙う
 オープンに先立ち7日に行われたメディア向け内覧会。いちご地所代表取締役社長の細野康英氏は今回の新宿でのホテルについて「いちごブランドのホテルとして、これまでの宿泊特化型やラグジュアリー型ではない『ライフスタイルホテル』として打ち出していきたい」と語った。それを支えるテーマとなるのが「公園のような開かれたホテル」。新宿中央公園を見渡せる景色を客室などで提供するとともに、レンタルサイクルサービスなど更なる付加価値創出に努めていく考えだ。
 ところで先もふれたが「THE KNOT TOKYO Shinjuku」が目指すスタイルは「ライフスタイルホテル」。オペレーションを行う池田創業(東京都新宿区)代表取締役社長の池田龍哉氏によれば「欧米には多いが、国内では非常に供給が少ない」とのこと。
 「ライフスタイルホテル」とは共用部の高いデザイン性や、ホテル内外におけるローカル体験、交流を創出する仕掛けを付加価値として設けることで、ファッションや食、ライフスタイルへの関心が高い層に利用訴求を目指すもの。米国ニューヨークではライフスタイルホテルの総数が1割前後なのに対し、東京は0・7%ほどと言われる。東京都福祉保健局によると新宿エリアの宿泊施設数(ホテル・旅館・簡易宿所・下宿)は250施設1万7828室(2016年3月31日現在)。日々増え続け競争も激しさを増すも、新しいトレンドを看板に掲げることで、市場の開拓者となることを狙う。
 「新宿ニューシティホテル」の改装前、3年間の平均稼働率は「90%ほどでした」(池田氏)という。ただ国内団体客の利用が多く「インバウンドは3~4割ほど」。「THE KNOT」では「稼働率は同様の9割ほどを狙うが客単価は大きくあがる。加えてインバウンドも大きく増えることを見込んでいる」と自信を見せる。
 一方、ホテルでは横浜に続いて新宿進出となった、いちごブランド。細野氏は「現在、札幌、広島でもホテルの計画が進んでいます」と明かす。新ホテルは供給数も圧倒的に少なかったカテゴリー。いちごの次の一手への注目度は高そうだ。

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