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NTT都市開発 デジタル技術開発に生かす

2017.09.18 12:24

(仮称)新橋一丁目ビル新築工事」高層階にJR九州のホテル
 ホテルとオフィスの複合開発として早くから注目されていた新橋一丁目再開発の全貌が明らかになった。エリアの交流拠点を目指した最新ビルを生み出すべくデジタル技術を活用した開発であり、リーシング活動にも最新技術を生かす方針だという。

 NTT都市開発(東京都千代田区)は14日に記者説明会を実施し、港区新橋1丁目で開発を進めていた「(仮称)新橋一丁目ビル新築工事」の開発概要を発表した。東京電力(東京都千代田区)が保有していた旧「東新ビル」をNTT都市開発が取得し建替えるもの。2019年7月の竣工を目指し、今年8月22日に安全祈願祭を実施し着工済み。建物規模は地上27階地下2階塔屋2階、敷地面積3072・17㎡、延床面積約3万6100㎡、高さ約135m。2階~16階はオフィスでワンフロア約330坪。眺望の良い18階~27階は九州旅客鉄道(福岡市博多区)のホテルブランド「Blossom」が入居。客室数約167室を誇るハイクラスなビジネスホテルを予定する。ホテル床は九州旅客鉄道が保有。事業費は非公表。
 商業事業本部商業事業部開発担当部長兼プロジェクト推進部担当部長を務める中村高士氏は「開発コンセプトは『境界の架け橋』とした」と説明する。開発地がビジネスエリアと商業エリアの中間に位置し、2つの異なるエリアの「架け橋」とするべく足元は約14mの天井高を誇るピロティ空間を設ける計画だ。加えて建物の観点からは「創造する場所と憩う場所」の「架け橋」とするべく、知的生産性を高めるワークプレイスを構築する。「リラックスでき集中できるメリハリの利いたオフィス」を目指し4面採光を実現した。また、中村氏は「働きやすさや心の豊かさ、心地よさといった『+α』が求められる今、複合ビルとして対応できないか考え、開放的な眺望を有するホテル、創造性を喚起するオフィス、緑豊かなピロティ空間といったすべての機能を繋げる演出にこだわった」と説明。通常1階でオフィスとホテルの入口を分けるが、2階でオフィスエントランスとホテルを繋げることで各種ホテルサービスを利用しやすくなる。
 開発にあたってNTT都市開発では初の取り組みとして「外装のデジタルモックアップ」と「バーチャルリアリティ(VR)」を活用している。同ビルはガラスカーテンウォールを採用しているが、外装デザインを決定する際、部分的に実物大の外装模型を造り、あらかじめ候補に挙げた数種類の型を試す場合が多い。この手法では費用・時間がかかり、検証できるバリエーションが少なくなる等のデメリットが存在していた。一方、今回は協力事業者である大林組(東京都港区)の協力を得てデジタルモックアップでの外装デザインの検討を行った。実際に使用するすべての部品を忠実に再現した3Dモデルを作成し、外部のスーパーコンピューターを利用して高精度で画面上に再現した。周辺映像もドローンで実際の写真を撮影して反映することができ、3Dモデルでありながら各部品1つ1つまで再現できるほどの高精度を誇る。これにより外観全景を確認しやすくなり、オンライン環境があればその場で修正し検証可能。バリエーションも相当数作成でき、コストメリットが見込める。さらにVRとの親和性が高くCGを利用した営業ツールへの展開を見込んでいる。また屋内にも対応しており、16階の眺望をドローンで撮影、屋内のCGに本物さながらの眺望が反映している。
 リーシング活動は直接営業を実施しており、年内か年明けからチャネル営業を開始するという。事前営業の反応では興味を持つ企業は数社あるそうだが、まだ検討までは至っていない。募集賃料は非開示であり、竣工予定の2019年7月は「オフィス大量供給」の真っ只中で、テナントの選択肢は広がることには懸念を示しつつも「買った時はオフィス市況が良くなかったが、現在の好調な市況から比べると事業性は高い」(中村氏)と自信をのぞかせている。

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