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不動産の「空き時間」を有効活用 販促イベント特化型のサイトを開設

2017.08.28 17:25

ウェブで利用者マッチング、収益向上 
 モノや場所、サービスを共有する「シェアリングエコノミー」が不動産業界にも波及している。単独契約ではなく時間貸しにすることで利便性と稼働効率が向上。従前の賃料以上の収益が得られるケースも少なくない。そんな中、貸スペースや駐車場のシェアは知られているが、専門性を追究したマッチングサービスが登場している。

 空きスペースを時間貸しで利用者に提供するマッチングサイトは数多く存在するが、ポップアップショップや商品展示会等のイベントに適した貸スペースに特化したウェブサイトは珍しい。「ショップカウンター」は小売り店鋪やアパレルメーカーが利用者となり、利用目的がはっきりしている点が最大の特長といえる。ITベンチャーのカウンターワークス(東京都目黒区)が開発し、2015年5月に本格的に運営を開始した。当初の掲載数は60程度だったが、現在では700超にまで拡大している。代表取締役CEOを務める三瓶直樹氏がインターネット広告配信システム会社に勤務していた当時、小売店やメーカー、広告代理店等が貸スペースを確保するために苦労していたことに着目。独立してカウンターワークスを設立した。
 「Eコマースの普及により実店舗を保有していない企業が増えているが、消費者からは『実際に商品に触れる機会がほしい』との要望が多数寄せられている。そのため、顧客とのリアルな接点の場として短期的にポップアップショップや展示会を行う必要性に迫られている」(三瓶氏)
 こうした販促イベントを実施する際に苦労するのが前述した通り「場所の確保」だ。三瓶氏によると「イベントや販促目的に特化したウェブサイトで利便性の高いものは少なく、そもそも貸スペースとして運営されていない空き店舗や営業中の店舗などの一時利用は探索や交渉のハードルも高かった。条件に見合った場所を確保できるまで地道な作業が続く」のが一般的で、あまりにも効率が悪かった。こうした課題を解決し、貸スペースのデータベース化を実現したのが「ショップカウンター」といえるだろう。
 現在、掲載されている物件は首都圏が中心。アウトレットモールやショッピングモール、ギャラリー、飲食店等が目立つ。利用者の9割が法人で、利用登録数は1500にのぼる。利用者は何もない貸スペースに自ら什器・製品を並べるケースが多いが、中には「喫茶店を3日間貸し切り、缶コーヒーの新製品販売イベントを実施した」(三瓶氏)事例もあり、利用シーンは幅広い。今後は大阪や名古屋といった地方中核都市の物件掲載も視野に入れており、サービスを拡大していく予定だ。また利用者向けに損害保険を付帯するサービスも検討している。
 オフィスと商業施設が一体化した複合開発が主流のビル業界においては、多くの集客が見込める販促イベントは「フロア貸し」とは異なる新たな収益源として認知されている。中小ビルでもエントランスや空室を貸スペースとして提供することで収益の拡大、賑わい創出に繋がる可能性は高いのではないか。

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