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クラウドリアルティ クラウドファンディング「Crowd Realty」を正式リリース

2017.06.05 11:25

「京町家第1号ファンド」を皮切りに国内・海外案件を公開へ
 クラウドリアルティ(東京都千代田区)は先月26日、不動産クラウドファンディングサービス「Crowd Realty」サービスを正式公開すると同時に、国内投資案件第1号となる「京町家1号ファンド」を組成した。
 同社にはこのサービスを通じて目指す理念がふたつある。ひとつは個人投資家の投資の選択肢を広げること。そのため、1案件あたりの最低出資金額として5~15万円の水準を目指す。もうひとつはこれまで資金調達の選択肢が少なかった小規模案件やリノベーション・開発が伴う案件にも、対象不動産から生じる将来のキャッシュフローをもとにバリュエーション(投資の価値計算や事業の経済性評価)を行い、市場の利回り目線を確認しながら資金調達を実施する機会を提供すること。このふたつの実現に向けた一歩が踏み出された。
 今回の「京町家1号ファンド」の物件について、代表取締役の鬼頭武嗣氏は「しばらく、空き家となっていた物件だった」とのこと。この物件をリノベーションし、宿泊施設運営事業を主とするトマルバ(京都市下京区)が直営の宿泊施設「宿ルKYOTO」として運営を行う形で、今回、ファンドの組成となった。
 「このような物件はこれまでリノベーションなどを行うにせよ、銀行からの融資がほとんどつかない案件でした。当社のクラウドファンディングのシステムを通して投資家から広く資金を集めることで、宿泊施設としての運営を実現させます。これまで不動産投資は利回りが重視される傾向がありましたが、当社の案件は利回りをしっかり確保するだけでなくまちづくりとも両立させたいと考えています」(鬼頭氏) ソーシャルレンディングとの違い 発祥に近いP2P型のサービスに
 これまで国内においてはソーシャルレンディング型の不動産投資プラットフォームは多く誕生してきた。「Crowd Realty」もそのひとつとみなされがちだが、鬼頭氏は「根本が異なっている」と指摘する。
 「これまでのソーシャルレンディングは個別の案件を投資家に開示することはできません。細かく言うと、これらの事業者は貸金業法に準拠する形でつくられたコーポレートファイナンスであり、ソーシャルレンディング事業者が企業の信用に基づいて投資が実行されます。投資家である個人と融資先である企業・個人の間に、Bであるソーシャルレンディング事業者が介在することになるわけです」(鬼頭氏)
 一方、クラウドファンディングの発祥である米英ではP2P型、つまり個人が個人に投資する形が主流。我が国でソーシャルレンディング型が主流となっている背景には「貸金業法などの規制によるもの」であり、「この発展は日本特有で、ガラパゴス的」と鬼頭氏は話す。
 では「Crowd Realty」は何が異なるか。それは金融商品取引法に基づいている点だ。
 「私は『Crowd Realty』を『P2P型のリート』にするように、これまでシステム作りに動いてきました。当社の仕組みでは投資家である個人が企業・個人の募集する案件に対し投資する。そこに当社は投資案件の証券化などの形で入りますが、基本的にはCtoCです。行政の担当者からも『初の事例』と評され、何度も調整を行うとともに、大勢の投資家と案件をつなぐためのシステム開発にも注力してきました。今回の『Crowd Realty』の正式スタートはわが国にクラウドファンディングを根付かせる一歩になるとともに、個別の案件の中身が見えることによって更なる投資家層の拡大につながるのではないでしょうか」(鬼頭氏)
 すでに同社には2号目、3号目となる案件が持ち込まれていて、鬼頭氏も「今後は毎月、何かが起こる状態に持っていけるのでは」と話す。加えて、海外案件についてもエストニアでの投資案件の2号目も組成を準備している。日本初のクラウドファンディングの今後に対し注目が集まる。

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