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大林組 免震建物の「衝突」防ぐ フェイルセーフ機構を開発し実物件へ適用

2017.02.06 16:51

 大林組(東京都港区)は先月26日、住友ゴム工業(神戸市中央区)の協力のもと「免震フェンダー」を開発した。
 免震建物は地震時に建物が大きくゆっくりと動く構造であるため、地盤側の擁壁と建物の間に適切なクリアランス(隙間)を設けている。建築基準法などで定められている地震が発生した際、建物はこのクリアランス内で水平に揺れ、擁壁と衝突することがないよう設計されている。一方、想定以上の大きな地震が発生した際には、地盤側の擁壁が建物と衝突する場合もあり、衝突による衝撃力で建物自体が大きく揺れるため居住者の安全性が脅かされたり、建物が損傷したりする可能性がある。また、擁壁が設けられない中間層免震建物でも、免震装置の過大変位防止用ストッパーが設けられる場合があり、想定以上の地震時には、ストッパーと建物の衝突によって同様の問題が発生する可能性も捨てきれない。
 一方「免震フェンダー」は、建物と擁壁(またはストッパー)との間に設置する緩衝装置として機能する。高減衰ゴム製の緩衝材が塑性変形することで衝突のエネルギーを吸収し、衝撃力を緩和するため、想定以上の地震に対して建物および居住者の安全性を向上させる。高減衰製ゴムブロックと取り付け用の鉄板で構成されたシンプルな装置であるため、コストを抑えることができる。設置に当たっては、免震建物に通常求められるクリアランスに装置の厚さを考慮する必要があるため、本装置は新築免震建物への適用を前提としているが、現状のクリアランスの大きさや敷地条件によっては既存免震建物にも適用できる。
 現在、基礎免震建物では「大林組大阪機械工場BCP拠点事務所(大阪府枚方市)」、中間層免震建物では「(仮称)太白区あすと長町一丁目計画(宮城県仙台市)」や「広島ガス株式会社防災拠点ビル(広島県広島市)」への適用が決定している。未設置物件と比較して衝突時の衝撃力を約2分の1~3分の2に低減する設計となる。

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