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奥村組 積層ゴム30年経っても安全 建物を揺らして免震装置を実証実験

2016.11.14 16:16

 昭和60年に実用建物として日本で初めて免震構造評定を取得し「免震のパイオニア」を自認するゼネコンの奥村組(大阪市阿倍野区)は8日、茨城県つくば市に昭和61年に建設した「奥村組技術研究所管理棟」において、建物そのものを人工的に揺らす「自由振動実験」を実施。竣工から30年が経過した現在でも免震装置の性能が確保され、十分に安全性を維持していることを実証した。  免震装置の普及は高層ビル等でも進んでいるが、その技術が確立されてから30年程度と浅く、長期間にわたって耐久性や性能を維持しているかどうか確認されていないのが現状。特に免震装置の中で一般的に用いられている「積層ゴム」の経年による性能変化は試験で導き出された予測にとどまっており、初期の免震建物を継続的に調査した例は極めて少なく、予測の妥当性を検証するには実建物において追跡調査が必要となっていた。
 今回の実験では、総重量約2500トンもの建物全体を油圧ジャッキで水平方向に強制的に10cmスライドさせた後、ジャッキを解放。建物を自由振動させて揺れの周期や振幅等のデータを測定・分析。積層ゴムの経年による性能変化を検証した。結果として積層ゴムの水平剛性は竣工時から約9%高くなっており、免震機能の若干の低下は見られたものの、設計時に想定した剛性増加率が最大17%であったため、想定内に収まるという結果になった。
 今回の実証実験にはマスコミ・一般事業者が招待され、実際に自由振動実験に参加。「管理棟」1階のセミナースペースで実験についての説明を受けた後、建物を揺らすためのカウントダウンが始まる。そして「ドン」という轟音と共に震度6弱に相当する振動が発生したが、テーブル上に置いてあったペットボトルは落下せず、免震性能がいかに安全か証明した形だ。また、研究所内にある大型耐震実験棟や音響実験棟、管理棟・新倉庫棟の見学ツアーも実施。国内で発生した大型地震の揺れを体感した他、同社が注力する音響技術を目の当たりにし、参加者から質問が相次いだ。

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