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松岡地所 都心のビルに天井高5m超の執務空間

2016.10.10 11:50

ファッションショー開催、来場者450名超
 「松岡田村町ビル」は「虎ノ門ヒルズ」近くの新橋5丁目に位置する地上8階地下2階、ワンフロア約134坪、昭和49年に竣工した正当派オフィスビルだ。今年6月、同ビルを保有・管理する松岡地所(東京都新宿区)はリノベーション工事を実施。最上階である8階に誕生したのが天井高5・2mに及ぶ開放的な賃貸フロアである。郊外の大型倉庫ならいざ知らず都心のオフィスビルでこれほどの大空間が存在するのは極めて珍しい。
 実は松岡地所の創業者である松岡清次郎氏は美術品蒐集家としても著名で、白金台には私設美術館「松岡美術館」が存在し、その前身としてこの8階フロアを美術館として使用していたという歴史がある。今回そのフロアをオフィス仕様に改修したもの。同ビルのエントランスにも大理石床の重厚感やそれに合った彫刻2体が鎮座しており、今回のリノベーションはビルの歴史と、美術館当時のデザインを最大限生かすことを前提に実施されたものだ。リノベーションの企画・施工にはブルースタジオ(東京都中野区)が選定された。その理由を営業部主任の佐藤穂高氏は「建物ではなく『物語』を作るという彼らのリノベーションに対する思想に共感したため」と説明する。今年9月にはリノベーションのコンセプトやビルの歴史に共感した国内ファッションブランドがファッションショーを実施し450名超の来場者を集客した。貸スペースとしても評価された形だ。
 佐藤氏は「当社が保有するビルでリノベーション工事を行ったのは今回が初めて」とする。経年劣化によってオフィスニーズが低下した場合「これまでは付き合いの長い内装業者等に相談して部分的にバリューアップを行っていた」(佐藤氏)がその限りでは結局、設備単体での更新に留まり建物全体の付加価値を高めるという効果は得られなかった。それを今回解消させた形となった。
 一方、改修工事終了後から引き合いは殺到しているが、実はまだ成約には至ってない。佐藤氏によると「天井高がありながら内装造作に制限があることや、特質性あるフロアのためなかなかオフィスとしてのイメージよりもイベント使用の需要が多い」という。「長期契約を求む弊社にとってはジレンマを感じていたが、逆にイベントを行うことによって色々な方に周知してもらうことを期待している」と前向きに捉えている。
 希少なオフィスの価値を最大限に生かせるテナントとはいかに。

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