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<不動産業界注目企業の横顔>ビル・マンションの配管延命に役立つ水活性化装置

2015.07.20 16:49

スケール・スライムを除去し省エネに貢献
永久磁石と遠赤外線で水の浸透力・溶解力が工場
 昭和47年に創業し、住宅等に設置される水道メーターの製造・販売を手掛けている富士計器(東京都品川区、本社:北海道釧路市)。同社が本社を置く北海道のような寒冷地では、地中に設置された水道メーターが凍結しないよう、埋設深度が水道法によって定められている。一方、水道メーターは8年ごとに機器を交換することが義務付けられており、機器を交換するたびに一定の深度まで地面を掘り返さなければならないという課題があった。その課題を解決するために同社が開発したのが、伸縮式のメーターボックスである。
 「FUJI伸縮式メーターボックス」は、スプリング状の円筒形ボックスの内部に水道メーターを設置。ボックスごと地中に埋設することでボックス内は一定の温度を保持し、水道メーターが凍結することを防ぐ。また、機器を交換する際にはボックスを伸縮させて内部の水道メーターを交換するだけ。地面の掘削作業が不要となり、大幅な作業時間の短縮を実現することから、同社の伸縮式メーターボックスは北海道内の各自治体で広く導入されることとなった。
 その後、同社は水処理に関する技術開発に着手。永久磁石と遠赤外線の力を組み合わせ、水を活性化させる水処理システム「サンダーシステム」を開発し、これまでに様々な商品化に成功している。この「サンダーシステム」は、給水管などの水の通り道の外側を永久磁石で挟み込むというシンプルなもの。強力な磁力線に流体が直角に移動すると電気が発生するという「ファラデーの電磁誘導の法則」を応用したシステムである。永久磁石の間を水が通過すると、水素原子(マイナス)と酸素原子(プラス)からなる水分子は磁石の極性に反応し、管の中で動きが活発化する。これを「水分子のスピン現象」と呼ぶ。加えて、永久磁石から発せられる遠赤外線が水分子の波長と共鳴し、水分子を振動させる。この相乗効果で水分子が活性化し、物質への浸透力・溶解力が向上した水となるのだ。
家庭向け製品は大ヒット 業務用施設への訴求図る
 「サンダーシステム」をもとに商品化された代表例が、家庭用の蛇口に取り付ける「蝶々」である。その名の通りチョウがはねを広げたような形状をした同製品は、蛇口に取り付けることで内部の水を活性化させ、管内部の腐食やサビを除去することができるというものだ。それだけではない。活性化した水は沸騰までの時間が短いことや、油汚れを落としやすくするといった特性もあることから、「蝶々」は発売開始から大きな反響を呼び、累計販売個数80万個の大ヒットを記録した。
 富士計器の企画開発部・大越嘉一氏によれば、「サンダーシステム」の技術は業務用施設の水処理装置としても活用されているという。給水管に挟み込む形で設置するタイプの「サンダープロテクト」、給水管の一部に代替して設置するタイプの「サンダーオリジナル」は、どちらも動力となる電源は不要。貯水槽が設置されているマンションなどでは、受水槽に貯水された水を活性化させる「じゅんかん」が水の衛生管理を守る役割を担う。
 冷却水系統の設備では、スケールやスライムといった障害が熱交換率を低下させる大きな要因となる。スケールは主に温度の高い熱交換器などに発生しやすく、スケールの付着の原因としては、硝酸カルシウム・炭酸カルシウム・マグネシウムなど一般的に硬度成分と呼ばれる物質によるものである。これらの物質の特徴は温度が高い場合、水に溶けることができなくなることから、ボイラー面や給湯配管に蓄積されスケールとなってしまう。「サンダーシステム」で活性化された水は、溶解力・浸透力が向上しているためスケール化を抑制することができる。また、スライムは水中の汚濁成分が微生物と結合して粘着性の物質となり、これが金属面に付着するというものだ。スライムが粘着性の塊となるのは、微生物がコロニーと呼ばれるケースに入っているためである。「サンダーシステム」による処理水はコロニー内に浸透し内部から溶解するため、スライムの発生を抑制・減少させる効果が期待できる。
 サンダーシステムの優れた技術は、科学技術庁長官賞や発明奨励賞といった評価を受け、ビル・マンション、教育施設、病院、レジャー施設など幅広い場面で多くの実績を残してきた。大越氏は「既存ビルやマンションの給水管洗浄・延命の切り札として『サンダーシステム』導入に関する問い合わせは増えています。また、工務店やリフォーム業者からの引き合いも増えてきている」と述べており、「サンダーシステム」を応用した同社製品の更なる訴求を目指すべく、販売・施工代理店を全国で募集しているとのことだ。既存建築物の利活用が不動産業界におけるトレンドとなる中、長期にわたり安全・安心な水環境を提供する同社の技術は、今後も注目すべきトピックといえるだろう。

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