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ピットストック 岩本町の築40年超ビル 購入後のリノベで再生・高稼働を実現

2013.07.08 17:01

 東京都心の北東部、岩本町は繊維関係の卸売商が多く立地する問屋街だ。しかし流通形態の変革や長引く景気低迷により店を畳んだ問屋も少なくない。さらに個人経営の中小ビルが集積していたこともあって大規模再開発からも取り残され、既存中小ビルの空室活用が数年間にわたる課題となっている。
 こうしたなか、岩本町に立地する築40年超のビルを購入し、リノベーションによって高稼働のビルへと生まれ変わらせたオーナーがいる。ピットストックの代表・伊藤靖治氏が手がけるのは、築古の中小ビルをサブリースしてリノベーション後に賃貸する事業。このスキームですでに7棟の再生に成功しており、このたびついに自社ビルの購入に至った。
 「8ビル」は、昭和45年竣工のもと薬品工場。鉄骨造の中二階つき4階建てで、1階を店舗、2階をオフィス、3~4階を住居に改修した。現在1階はスケルトンですでに入居申し込み済み。2~3階は入居が決定し、4階も問い合せが数件来ているという。内装はいずれも白い壁とグレーのフローリングというシンプルなもので、鉄骨や下地がむき出しになった天井がアクセントとなっている。電気や水周りなどのインフラも改修したが、それでもリノベーションに要したコストは一般的な価格の7割ほどに抑えられている。しかも賃料は近隣相場の上をいく設定だ。この低コストかつ効果的なリノベーションこそ、同社が培ってきた独自のノウハウが生かされた部分といっていいだろう。
 岩本町と隣接する東神田や浅草橋、さらに北側の東日本橋でも中小ビルの稼働率が低下しており、何らかの対策が必要となっている。これらのエリアは数年前から「セントラルイースト東京」などと呼ばれ、イベントや若手クリエーターの活動の場としてビルを提供する試みが続けられており、手頃な物件の供給源という認識も根付きつつある。従来のように、一般企業からのニーズを追っているだけでは稼働率向上は見込めないのである。
 リノベーションの目的とは、新たな機能や魅力を付加し、価値を向上させることである。「8ビル」の成功は、まさに好事例といっていいだろう。

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