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<プロに聞く 金融事情>ニッセイ基礎研究所 個人金融資産残高1555兆円 投資マネーの勢い今後鈍る恐れ

2007.09.24 10:26

 ニッセイ基礎研究所は、平成19年46月期末の個人金融資産残高が、過去最高の1555兆円にのぼったとの報告書をまとめた。投資信託の購入増に株価上昇による資産価値の上昇が加わったことが原因とみられる。
 残高では、現金・預金が778兆円で個人金融資産全体に占める割合が約50%とウェートが高いが、貯蓄と投資に分けると確実に投資への動きが続き、平成17年には投資割合が貯蓄を逆転し、さらに割合を増やし続けていた。
 平成14年から元本割れの可能性があるリスク性資産での運用が増加し、特に中国やインド、BRICSなど外債に関する投資信託がメインとなっている。投資信託の中には不動産も組み入れられ始め、証券会社もパフォーマンスの高い商品を販売、また販売推奨を行ってきたこともあり、ここ1年半でREITに対する理解の深まりと購入層の幅を広げてきた。
 ここまで着実に伸びを見せていた個人金融資産残高であるが、「79月末はマイナスに転じ、残高はこれまでのような順調な伸びを見せないでしょう」と、ニッセイ基礎研究所の経済調査部門、矢嶋氏は分析する。
 サブプライムローンは7月末に問題が深刻化し、世界的な株価下落によりリスク性資産が売却の流れとなったためだ。東証リート指数は、9月18日には年初来安値となる1774・18まで急落し、この状況が長期化すれば不動産投資マネーの勢いはさらに鈍る恐れがある。
 審査を厳格化し、融資に慎重な姿勢をとる銀行にとっては、投信はフィービジネスとして大きな収益柱だ。銀行から投資マネーが引いてしまうと、不動産開発で利用されているノンリコースローンの借入金利が上がる可能性、またREITの資金調達に も影響が出る。
 今後の動きが過熱する不動産市場をどのように導くかは、9月末の結果により大きく左右されそうだ。

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