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噂のスクランブル 業界のヒンシュク買う某社の凄まじい手口 セールス力は確かに凄いが 募集チラシの条件もとに他階のテナントを引抜き
1995.12.15 14:30
テナント獲得競争が激しい貸ビル業界。仲介の現場では他ビルに入居している企業に対する勧誘、キツイ言葉でいえば引き抜きが活発だが、不況でパイが限られている以上、これもいたしかたないという面もある。しかしそんな仲介市場にあって、「いくら何でも、この業者のやり方はえげつない」と半ばヒンシュクを買っているのが、急成長中のA社だ。
営業社員には猛烈なノルマを課し、コミッション制を敷くA社は、以前からいわゆる「ヌキ」行為が取りざたされていた。他社が専任、あるいは専任的な付き合いをしている空室ビルのオーナーを直接訪れ、「当社に任せてくれれば〇ヶ月(短期間)のうちに必ず埋めてみせる」と口説き、その見返りに報酬として通常の手数料の数倍(文字通り法外な高額)を要求するというもの。「持ちつ持たれつ」を基本に、横のつながりを重視する仲介業界の慣習からすれば重大な「掟」破りという訳だ。
もっともこれだけなら、テナント欲しさに背に腹は代えられないオーナーと合意の上で「商行為」という言い分もあるかも知れないが、近頃指摘されているのは「もっとひどいケース」。「被害」を被ったというある仲介業者が語る。
「例えば当社が専任を受けた物件が1室空いたとする。と、当社は募集チラシを業者間に流します。今の状況下ですと、当然、新規の募集賃料は他のフロアの入居テナントの現賃料より安いことが多い。するとこのチラシを入手したA社は他階に入るテナントの所へ行って、『御社の賃料はこんなに割高で損をしている。オーナーが値下げしないのならば、当社が格安物件を紹介しよう』と持ちかけ、引き抜いてします。1室を募集するために流した情報を元に、結局、全館をカラにされたこともあります」と怒りを隠さない。
空室に悩むオーナーにとっては、これぞ頼りになるのか、どうなのか。