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日本橋西川ビル 4年にわたる大改修が客付けに結び付く 築30年超え空調、水回りなどを一新 竣工以来昨年まで100%稼働維持
1995.06.15 16:04
平成4年から、大改修を行っていた日本橋西川ビルでこの度、2フロアでテナントの成約が決まった。新たに入居するのは重電機メーカーとのこと。築35年を超えるビルが大改修で競争力を増し、これが客付けに結び付いた典型的な例といえるだろう。
同ビルは中央区日本橋、地下鉄銀座線三越前駅徒歩3分の好立地に建ち、昭和37年竣工から30年以上同じテナントが入居し、一度も空室を抱えた事が無かった。
地上9階、地下3階の同ビルは、基準階面積530坪と旧タイプのビルとしては、広いオフィス空間が有しており、この点も長期間テナントを魅き付けた理由として挙げられよう。同ビルが貸しているオフィス部分は、4階から9階までの5フロア。このうち2フロアを野村証券が、4フロアを、東洋信託銀行がテナントとしてビル竣工以来入居し、この2社により稼働率100%をキープしてきた。
ところが昨年、東洋信託銀行が江東区砂町に6000坪の本社ビルを建設。これに伴い、同行が借りていたうちの3フロアが空く事になった。
東洋信託の移転理由は、西川ビル内の部署が扱っていた証券代行業務が増大し、オフィスが手狭になったため。増床しようにも同ビル内では空きスペースが無かったため、外部転出へとなったものだ。
「当初、東洋信託さんからは、前の部署移転後には、別の部署の入居を予定していると伺っていましたが、株式市場の低迷による業務縮小でそれも立ち消えになったようです」と語るのは、日本橋西川ビルの高田勝令氏。
共用部分も含め総額20億円以上
日本橋西川ビルの場合、立地の良さや隣接する物件に1フロア500坪以上の物件がこれまでほとんど無かった事が安定した稼働状況を支えて来たと言えるだろう。
しかし、逆に安定した稼働率を堅持していた為に、ビルのリニューアルが遅れてしまっていたとも言える。特にトイレなどの共用部分や、空調、エレベーターなど設備面において老朽化、陳腐化が進んでいたことは明らかだった。
こうした事から同社では改修に踏み切ることになった。まず行ったのは、空調システムの転換。これまでのセントラル方式から個別空調タイプの交換。また熱源のボイラー設備を撤去し、ガスによる吸収式冷温機を導入した。この設備すべての更新には、約15億円をかけている。撤去したボイラー設備の後には、大規模な貯水槽を設け、万が一の災害時には、数日間の水の確保が出来るようにした。空調改修終了後、昨年の12月から、エレベーターの交換に着手。4機あるエレベーターを順次交換。1機あたり1億2000万円、4機合計で工事費を含め5億円弱の費用を計上し、最新型のエレベーターを設置した。
この他では、トイレなど水回り、エントランスなど共用部分、さらに外なども改修が行われた。こうした大改修の結果、1年以上空いていた2フロアが見事に埋まった訳だ。
1年以上空室が続いたことで改修を決断
日本橋西川ビル 管理責任者 高田勝令氏
当社は、寝装寝具を扱っている西川産業の関連会社として、貸ビル業を中心に展開しています。この日本橋西川ビルは、昭和37年竣工と当社が所有しているビルの中でも中心的な存在だけに、昨年東洋信託銀行移転後、3フロアー分が一年以上空室が続いた事は正直ショックでした。当然竣工から30年以上経過している当ビルでは、全体的なリフォームが必要でしたが、テナントが常に必要としている状態では逆に改修が出来づらいと言う背景がありました。しかし総額20億円以上かけた大改修後は、新しいテナントが、決まり3フロアーの内2フロアーが埋まり、当社としても結果が出てほっとしています。
今後は、当社の管理する他のビルでもリニューアルを行う予定でいます。