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4月1日施行不動産特定共同事業法 許可制を導入 資本金基準、情報開示等で投資は保護
1995.04.01 10:39
不動産小口化商品の基盤整備を目的とした「不動産特定共同事業法」が4月1日から施行された。個人など投資家から広く資金を集めビルなどの建設を進めるこの事業について、投資家保護をはじめとするルールが制定されたことで、これを現在の低迷する不動産市況活性化の突破口としたい大手各社の取り組みが注目される。
今回の立法化は、不動産事業関連としては、昭和27年の宅地建物取引業法以来のものとなる。
新法では不動産特定共同事業を行う業者を許可制とした上で、共同投資事業者(契約締結訪印)について1億円以上、その子会社(代理媒介法人)について2000万円以上と、それぞれ資本金基準を設定。子会社は契約締結訪印の全額出資で、同事業を専門に行う、いわゆる特別目的会社(SPC)であることなどを定めている。この他、契約約款について一定の基準を満たすことや、共同投資事業の主な内容についての情報開示、さらに事業開始後の財務状況の報告なども義務付けられている。
不動産共同投資事業では、過去にマルコー、高野敏男商店、ライベックスなど、投資家から金を集めたまま倒産するといったトラブルがあったことも踏まえて、こうした許可制と情報開示で、投資家保護を図り、同事業を普及させようというもの。
我が国の共同投資商品市場におけるこれまでの累計市場規模は6000億円強。企業別では長谷工コーポレーションを筆頭に三井不動産、日興不動産、東洋不動産などが取り組んできたが、市場規模全体で見ると、ドイツの10分の1、米国の4分の1とまだまだ少ない。今回の新法施行がどこまで弾みとなるか。
不動産共同投資事業の業界団体である不動産シンジケーション協議会(理事長・田中順一郎三井不動産社長)ではこのほど200社を対象にアンケートを実施した。これによると、新法施行に伴い、直ちに事業者許可申請すると答えたのが35社、事業化段階で申請するのが65社と、全体の半数が同事業について意欲を示している。同協議会の二木憲一事務局長は、「デベロッパーにとって、個人の金融資産を開発に活かせる共同投資事業の持つ魅力は大きいはず」と語る。
各社の取り組みでも、長谷工が昨年秋、共同投資事業専業の子会社「長谷工パートナーズ」を設立したのをはじめ、三井不動産でも今月から来月にかけてを目途に専門子会社を設立し許可申請する予定だ。
三井不が今後の同事業で想定しているのは、従来の任意組合型と異なる匿名組合型。任意組合型では投資家が持ち分所有権を現物出資するやり方なのに対し、匿名組合型では個人が全額を出資する。事業者側としては金融機関以外から現金を得る有力な手段となり、加えて各投資家共有の所有権もすべて組合に移るため、主体性を発揮しやすいというメリットがある。
しかしその一方で、「現物出資の場合、投資家は100%近くローンを利用していたが、匿名型ではローンが厳しくなり、事実上、機関投資家のみの参加となってしまう恐れもある。個人投資家の参加を広く募るには一口当たりの最低金額を低く抑えるべき」(日航不動産・見崎邦夫常務)という指摘もある。
いずれにせよ、個人投資家をどこまで集められるかが今後の鍵を握りそうだ。