週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

オリックス・アルファ 保証金への新融資システムを開発 商業テナント中心に実績を伸ばす

1995.02.15 10:21

 オリックスのグループ会社オリックス・アルファが開発したテナントへの保証金の新しい融資システムが好調。多額の保証金を必要とする商業ビルのテナントに向けて開発されたもの。一方、オーナーもこのシステムを活用すれば、テナント誘致の切り札になるはず。
 オリックス・アルファ(東京都新宿区・前田博男社長)が開発した保証金への融資システム「補償金代理預託契約」が好調に推移中だ。
 保証金のない貸しビルがあればテナントにとり非常に魅力的なはず。こうしたビルはテナント誘致に競争力があるのは確実。一方、保証金をビル建設資金に充当した借入金の返済に当てるケースが多いのは事実。保証金はオーナーにとっても資金繰りに織り込み済みの場合がほとんど。
 保証金を担保に融資が実行されればテナント誘致はスムーズに行われる。だが、都市銀行をはじめとする金融機関はこうした融資依頼にほとんど対応していないのが現状。保証金はオーナーのテナントに対する預り金=債務。だが、オーナーはテナントに対して賃料を延滞した場合の延滞分や解約退居時の契約上の原状回復費用に対し債権を持つ。そうした債権を保全するのが保証金のシステム。
 金融機関は補償金を担保に融資を実行しても、テナントに延滞などがあれば貸付け金が保全されなくなるケースが発生する。それよりも現在の深刻な問題はオーナーの信用状態の悪化。解約時に保証金を返還できない事例の多発だ。こうした理由から金融機関はほぼ一律に保証金を担保にした融資を避けているようだ。
 オ社の「補償金代理預託契約」は次のようなシステム。オーナーとテナントは通常の賃貸借契約を締結する。次にビルオーナーとテナントとオ社との3社間で保証金代理預託契約を締結する。これを前提に本来テナントが預託する保証金をオ社がオーナーに代理預託(立替払い)する。この代理預託がポイント。この契約はオーナーとテナント間の債権債務の影響されないオ社のオーナーへの債権。テナントが解約退居する際には預託金は全額汚社に返還されることになる。
 オーナーが賃料の延滞分などを保全したい場合は補償金を例えば3割、7割に分割する。3割をテナントよりオーナーに直接預け、7割をオ社が代理預託する。オーナーはこの3割の部分で債権を保全することになる。同時にオ社はテナントに対しても再建を持つ。テナントは補償金の支払委託に伴う手数料(融資金の金利に相当)を「立替払い手数料」としてオ社に毎月支払う。
 こうして、テナントは保証金の負担を毎月の手数料というコストに変えて入居できる。保証金の額が比較的大きく、内装費が嵩む商業施設の場合はイニシャルコストを大幅に削減でき、テナントのメリットは大きい。オ社はこの新システムを商業ビルを主要なターゲットに開発しており、実際に実行されている事例もそのようだ。
 また、このシステムではオ社の債権の保全はテナントよりもオーナーの信用力にかかっていることから、「大手電鉄系の駅ビルやショッピングセンターで実行されたケースが多い」(同社鈴木事業開発副部長)。
 オ社の新システムはテナント誘致を活性化させる有効な手段なのは確実。「オフィスビルでは外資系のテナントには有効と考えている」(同社鈴木純部長)。
 同システムのこれからの動きに注目したい。




週刊不動産経営編集部  YouTube