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移転総コストを無料算定 三井不、誘致システムの運用本格化
1995.01.15 10:53
レイアウト図も作成 強力な営業ツールに パソコン使い案内状、引越費用などをその場で
三井不動産(田中順一郎社長)では、テナントの誘致戦術の一環として、ターゲットである企業の移転コストおよび移転後のオフィスレイアウトを短時間に無料でシュミレーションするBESTコンサルティングシステムを開発し、本格的な運用を開始した。ファシリティ・マネジメントを巧みに絡めた営業手法として早くも注目を集めている。
これは現在のオフィスの新ニーズとして、固定費の削減や業務効率の向上を目的とした移転、統合が大多数を占めていることに注目したもの。一般にオフィスの移転・統合には総合なファシリティ・マネジメント(FM)のノウハウを必要とすることから、原状回復費用や名刺の新規製作費用といった移転に要する総コストの算出や、最も効率的で現実的なレイアウト計画を正確に、しかも短時間で行うことは困難とされている。同社はこうしたことが移転需要を眠らせてしまっていたり、移転失敗といった事態につながっていると判断し、2500社にのぼる自社テナントを中心とした移転データの社内ストックという同社の強味を生かし、シュミレーションプログラムを開発、潜在化している移転・統合ニーズの掘り起こしに努めようという戦略だ。
具体的なシュミレーションの中身、方法は、まず移転コストでは、所定のシートにテナント側の現在および移転後の専用面積(使用面積)、賃料算定面積、賃料、共益費、保証金の5項目を記入するだけで、パソコンで原状回復費、引越し費、内装工事費などを見積り、将来の資金繰り表、損益計算書を作成、移転前後の効果比較を可能にするという。この際には経験的に導き出された数値を基に、移転通知案内状や名刺作成費用など賃料以外のイニシャルコストもかなりの精度で算定できるという。
一方、従来ならば10日前後の日数を要しているレイアウト図の作成についても、2~3日で作成。これにより、テナント営業の初期の段階から、具体的かつビジュアルに移転後のオフィス状況を提案できる。またオプションとして有料で基本レイアウト図を基にしたカラーコンピューターグラフィックスによる3次元表示やバーチャルリアリティービデオによるオフィスの確認も可能となっている。
同社のビルディング営業部は、一昨年に2部制に、昨年3部制にと部を増やすことでエリア密度などを高め、人数面でもすでに100人程度にまで増強が図られているが、このシステムの開発により、営業活動時に、単に賃貸情報を提供するのにとどまらず、「実際に移転するとどうなるか」といった各社が求める一歩踏み込んだ情報提供が出来る。
また既存テナントへのFM面でのサービス強化にも活用していく方針だ。