不動産トピックス
【10/12号・今週の最終面特集】都市と植物 広がるネットワーク
2026.10.12 13:56
自然に近い緑化が心身リフレッシュに効果 健康増進への好影響が学術的にも証明進む
緑の保全を都が推進 休息の質向上にグリーン
都市のヒートアイランド緩和や温暖化防止などの観点から、緑化は盛んに導入されてきた。一方、現代ではそれらの目的だけでなく都市で暮らし、働く人々の健康や癒やしといった効果を期待する向きも強まっている。生産性や集中力の工場にも効果が期待できるだけに、オフィスでの活用はますます広がっていく。
緑に癒される空間 期間限定で3カ所で開設
東京都では「自然と調和した持続可能な都市」の実現を目指し、都民や企業などの関係者とともに東京の緑を「まもる」・「育てる」・「活かす」取り組みを進めるプロジェクト「東京グリーンビズ」を推進している。この取り組みの一環として、都内3カ所のオフィスビルに「東京グリーンビズ・ラウンジ」を期間限定で開設。10月7日から9日の3日間は千代田区大手町の「大手町タワー」地下1階にて展開され、14日および15日は新宿区市谷加賀町の「大日本印刷市谷オフィス」、21日から23日の3日間は港区赤坂の「赤坂インターシティAIR」2階オフィスラウンジでの開設を予定している。
緑には心身のリラックスやストレス軽減といった人体への影響だけでなく、地球温暖化の抑制や地域の防災力向上、野生生物の生育環境の確保など、多様な機能を有している。東京都政策企画局計画調整部で「東京グリーンビズ」のプロジェクトを担当している屋敷和也氏は「都は2023年7月より『東京グリーンビズ』のプロジェクトを推進しており、農地や樹林地をはじめとする豊かな自然を『まもる』取り組み、公園や街路樹の整備などの『育てる』取り組み、自然が持つ機能を防災などに役立てる『活かす』取り組みを積極的に推進し、東京の緑を未来へ継承するための活動を展開しています」と話す。
今回3カ所で開設される「東京グリーンビズ・ラウンジ」は、緑に囲まれた空間で短時間の仮眠やデジタルデトックスを行い、仕事に合間の心身のリフレッシュ体験を提供することで、休息効果を検証するもの。東京都が都内に勤務するオフィスワーカーに対して実施したアンケート調査によれば、勤務中の休憩で「十分に心身を休められていない」と感じている人は約半数にのぼった。また、回答者の8割超が「休憩は時間だけでなく質が重要である」と回答しており、休憩において落ち着いて過ごせる環境を求めていることが分かった。
「東京グリーンビズ・ラウンジ」は、緑に囲まれた空間で10分程度の仮眠により心身のリセットを促す「グリーン・パワーナップ」、スマートフォンを10分程度預けて緑の香りや感触を楽しみながら休息する「グリーン・デジタルデトックス」の2つのコンテンツを用意。「大手町タワー」の開発を手掛けた東京建物(東京都中央区)ビルマネジメント第一部長の大柄光司氏は「『大手町タワー』では敷地の約3分の1に相当する広大な面積に『大手町の森』を整備し、『東京スクエアガーデン』では立体的な緑地空間『京橋の丘』を整備するなど、当社は不動産開発を通じた緑地の整備を行ってきました。今回の実証を通じて、緑がオフィスで働く人々のリフレッシュ効果が検証され、生産性を高める機能として認知が拡大することを期待します」と述べた。
緑が人の健康増進に与える影響は学術的にも研究が進んでおり、千葉大学大学院の岩崎寛教授は「かつて、人と植物の共生は自然保護の観点からその必要性が説かれてきました。昨今は人の健康に着目したバイオフィリックデザインをもとにした建築が注目されています。ポイントは人工的な植栽ではなく、自然感のある緑の整備です。『大手町の森』は、正に自然感のある空間をつくり上げた希少な事例です。また、人は緑が視界に入るだけでストレスが緩和することが実証されています。企業が健康経営に注力する今、緑を取り入れた空間づくりはますます関心を集めていくと思います」と述べている。
「トヨタアリーナ東京」開業1周年 敷地面積の約40%を緑化
トヨタ不動産(東京都千代田区)が所有し、トヨタアルバルク東京(東京都江東区)が運営を担う江東区青海の「TOYOTA ARENA TOKYO」が、今月3日に開業1周年を迎えた。開業から1年間の累計来場者数は115万人を突破し、稼働率は93%を記録した。
「TOYOTA ARENA TOKYO」は、ゆりかもめ「青海」駅・りんかい線「東京テレポート」駅徒歩約5分に位置する多目的次世代アリーナ。男子プロバスケットボールチームのアルバルク東京のクラブハウスも併設し、同クラブのホームアリーナとして利用されているほか、スポーツや音楽をはじめとする多彩なイベントが開催されている。利用用途の内訳は「スポーツ」が35・6%、「音楽」が47・1%、「MICE」が15・7%、「その他」が1・6%。特に音楽分野では著名アーティストによる公演が数多く開催されたほか、国内最大級の国際音楽賞の会場にも選ばれた。スポーツの観戦にとどまらず、音楽やエンターテインメントを発信する拠点として着実に活用の幅を広げている。
同施設では環境負荷の低減と誰もが過ごしやすい空間づくりに努めており、屋上には出力300kWの太陽光発電パネルを設置しているほか、高効率な熱供給機器や地域冷暖房の導入、節水型衛生器具の採用などにより、エネルギー消費量や水使用量の削減を図っている。こうした取り組みが評価され、2025年には環境性能認証制度「LEED」で国内のアリーナ施設としては初めて取得し、「ZEB Ready」認証でも国内のアリーナ施設で最高評価を得ている。
このほか、敷地内には約450本の植栽を配置し、屋上には天然芝を配置することで、敷地面積の約40%を緑化。天然芝は、維持管理の頻度を抑えられるタイプを採用することで、環境負荷の低減にも配慮している。
<最新技術>IoT潅水装置の実証を実施
IoT製品メーカーのBH(東京都新宿区)は、戸田建設(東京都中央区)との共同研究として、土壌センサーを用いたIoT潅水装置「AirRainR Eco(エアレイン エコ)」による潅水制御の実証を1年間実施した。一律のスケジュール制御による前年度実績と比較すると、年間の潅水量を128・2㎥から20・2㎥へと84・2%削減し、期間を通じて植栽の枯損などはなく、緑地の健全性を保ちながら大幅に節水できることが確認された。
実証は茨城県つくば市にある戸田建設筑波技術研究所で行われ、対象の緑地は薄層屋上緑化(土厚100mm)。屋上緑化3系統(1面あたり約41m2)に対し、センサーによる土壌含水率をモニタリングした。土壌含水率は3系統でそれぞれ40%、30%、20%と設定し、この数値を下回った場合にのみ潅水を実施した。
夏季(6~9月)は高温・日射により土壌の乾燥が進むため、潅水量が増加。降水の少ない月(11月および1月)は冬季であっても潅水量が増加するなど、気象条件に応じて潅水が行われた。
今回の成果は、水資源の保全と緑地の維持管理負荷の低減に加え、建物の水使用の最小化を目指す「ゼロウォータービル」の実現にも貢献すると期待が寄せられている。



