不動産トピックス

【9/21号・今週の最終面特集】不動産・建設業界 広がるDX化の波

2026.09.21 17:11

人手不足問題や属人化解消に貢献 スタッフの柔軟な働き方にも対応
 各業界では優秀な人材の獲得競争が激化している。賃貸オフィス市場で好立地・新築・高スペックのビルに人気が偏重しているのはその証左といえるだろう。人手不足が企業経営の大きな課題となるなか、不動産や建設業界ではDX化が急速に進んでいる。

複数ビルを群管理 YNKエリアで実証開始
 東京建物(東京都中央区)と東京不動産管理(東京都墨田区)は、複数の建物を横断的に管理する拠点として、JR「東京」駅近くの「NTA日本橋ビル」地下1階において、ビルメンテナンスセンター「BASE YNK(ベース インク)」を開設した。
 従来のビル管理業務は建物ごとに担当者を配置し、それぞれの担当者が各現場を専任で管理していた。一方で「BASE YNK」では、複数の建物をチームで管理する「群管理モデル」を採用する。また、ビル管理におけるDX化と管理スタッフが働く環境の刷新を一体で進めることで、管理品質の平準化と向上を図り、安定したビル管理サービスを継続的に提供できる体制の構築を目指す。
 東京建物のビルマネジメント第一部長、大柄光司氏は「当社では八重洲・日本橋・京橋エリアを、それぞれの頭文字をとってYNKエリアと呼称し、重点的な事業エリアとして既存物件の保有や大型の再開発を推進しています。今回開設した『BASE YNK』は、YNKエリアに所在する当社保有の4物件を管理対象とし、群管理モデルの効果や運用上の課題を検証。将来的に対象物件の拡大を視野に入れています」と話す。
 「BASE YNK」では、各物件に分散していた設備警報やエネルギーデータなどを一元的に集約・管理する。また、気象情報や緊急地震速報などの外部データも取り込み、複数の建物の状況を統合的に把握できるダッシュボードを開発。施設内の大型ビジョンでは設備トラブルが発生した際の警報発報と、どの箇所でトラブルが発生したかが即座に表示される。このほか、トラブル発生箇所を可視化する取り組みとして、建物の3Dビューアを導入した。従来は平面図などの複数の資料を参照しながら確認していた設備情報が、点検や修繕の履歴情報を紐付けた3Dモデルとして表示することで、迅速な対応に役立てることができる。
 点検や検針、清掃報告といった日常業務については、THIRD(東京都新宿区)が提供する建物管理クラウド「管理ロイド」を活用。管理業務のDXを通じて属人化しやすい管理品質の平準化に努める。また、設備情報に加えて過去の対応履歴やトラブル事例など、東京不動産管理がこれまで蓄積してきた知識や情報を活用するため、設備異常発生時の対応方法や類似事例を検索することのできる、ビル管理業務に特化したAIチャットボット「ナレッジAI」を整備する。これにより、経験の浅い担当者でも過去の事例を参照しながら適切な対応を実現できるほか、学習に活用することで知見の継承や人材育成を支援する。
 東京都立産業技術研究センター(東京都江東区)は11日、江東区青海の同センター本部にて「研究発表会・施設公開2026」を開催した。都立産業技術研究センターは、製品開発や品質向上、故障原因の究明といった技術的な課題を抱える都内の中小企業を支援するため、都によって設置された公設試験研究機関。技術相談から依頼試験、共同研究まで、専門の研究員が民間企業のものづくりを幅広くサポートしている。「研究発表会・施設公開」は同センターの日頃の研究成果や支援設備を紹介するもので、研究発表会では全方向への移動が可能なメカナムホイールを搭載したロボットの段差克服や、モーションキャプチャーを用いたドローンの飛行性能評価をはじめ、建設や物流などのさまざまな産業での応用が期待される技術の研究成果全28件を紹介。施設公開では、3Dプリンターなどの設備を含む20の実験室が紹介された。
 この研究発表会ではIoTに関する民間企業との共同研究も数多く紹介された。その1つが、東京大学発のベンチャー企業・ソナス(東京都文京区)との共同で研究開発が進められている「次世代メッシュWi-Fiシステム」である。建設業界では、人手不足などを背景に限られた人員で品質、安全、工程を維持するため、監視カメラや各種センサーを活用した現場のDX化が進んでいる。一方、建設現場では工事の進捗によって壁や柱、資材の配置が変わり、携帯回線や既存のWi-Fiが届きにくくなるといった、通信環境の不安定さに課題があった。
 ソナスでは、次世代IoT向けの無線規格「UNISONet(ユニゾネット)」を独自開発。このUNISONetとWi-Fiを組み合わせたハイブリッド型の通信環境の構築を提案している。従来は階層間(縦方向)の通信には有線の配線工事を行う必要があったが、「次世代メッシュWi-Fiシステム」は各階に通信の中継点となるボックス型のアクセスポイントを設置するだけで、面倒な配線工事は不要。監視カメラやセンサーから得られる映像などのデータはWi-Fiの高速通信で受け渡しを行い、アクセスポイント同士の接続状況やネットワーク構成の制御はUNISONetの通信を活用する。都立産業技術研究センターの情報システム技術部、東内章氏は「次世代メッシュWi-Fiシステム」の特徴について次のように話す。
 「アクセスポイント間の通信品質を自動で把握して、最適な接続経路を自律的に構築するのが大きな特徴です。建設工事の現場では日によって資材の配置が変わったり、工程が進むと柱の配置が変わることなどがありますが、こうした環境の変化を自動で検知して電波の届きにくい場所をつくらないようにするのが従来との大きく異なる点です」
 既に試作機を用いた建設現場での実証が北海道、東京、沖縄で実施され、使い勝手や運用面の課題を検証。各階で安定した通信を実現するための研究は今後も継続して行われる。有線LANの配線工事を必要とした従来に比べ、「次世代メッシュWi-Fiシステム」では導入コストの低減も期待できる。現場における人手不足が続いているなか、建設業界のDX推進に大きく貢献する技術が実用化を間近に控えている。

東急不動産が契約書管理のDXを推進 Sansanの「Contact One」導入
 名刺管理をはじめとする営業AXサービスなどを展開しているSansan(東京都渋谷区)は、同社が提供する契約AXサービス「Contract One(コントラクトワン)」を不動産大手の東急不動産(東京都渋谷区)が導入したと発表した。
 「Contract One」は、紙や電子といった形式を問わずあらゆる契約書を一元管理できるクラウドサービス。自社開発のAIとオペレーター補正を組み合わせて正確にデータを抽出し、契約書同士の関係性を自動で紐付けして使い勝手の良い契約データベースを構築する。
 東急不動産は、渋谷を中心とする広域渋谷圏や竹芝エリアといった首都圏の大規模な都市開発をはじめ、オフィスビルや商業施設、ホテル、住宅など多様な不動産アセットを全国で展開。オフィスビルや商業施設に入居するテナントとの賃貸借契約書や関係事業者との業務委託契約書など、非常に多くの契約書を取り扱っており、契約の締結や更新、日常的な契約内容の参照など、契約関連業務は事業運営上の重要な位置付けとなっている。一方で従来の管理方法では契約書の検索に課題があった。契約期間が長期にわたる契約書も多く、担当者の変更時に過去の契約確認や必要書類の検索に時間を要していたため、引き継ぎ業務の負荷を軽減するという課題もあった。
 同社ビルマネジメント第二部の東川健太部長は「これまでの管理方法では、必要な契約書をすばやく見つけ出すことや複数の契約書の参照・比較、過去の契約を含めた経緯の確認に時間を要していました。『Contract One』を導入し、契約情報へのアクセス性を高め、担当者の変更や引き継ぎが発生しても業務を継続しやすい環境を整え、さらなる生産性の向上を目指したいと考えています」としている。




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