不動産トピックス

【6/8号・今週の最終面特集】ニーズを捉えるホテル戦略

2026.06.08 10:55

ファミリー・グループ旅行に対応 自宅のような快適さを提供
家具家電揃え中長期滞在に対応 観光客中心に予約状況は順調
 コロナ禍の収束による需要回復や円安などを背景に、観光産業では主にインバウンド客が市場を下支えしている。それに伴って不動産開発は「第三の選択肢」として宿泊施設の存在感が高まっている。新築のみならず既存物件においても、ホテルへの用途変更は収益拡大の足がかりとなっている。

「東京」駅前に旅の拠点 インバウンド需要を想定
 先月29日、JR「東京」駅八重洲口から徒歩1分の好立地に、アパートメントホテル「RHUMB LINE TOKYO(ラムライントウキョウ)」が開業した。運営は、宿泊施設の企画から運営までを一貫して手掛け、特にアパートメントホテルを得意としているカソク(東京都新宿区)が担当。建物の施工は旭化成ホームズ(東京都千代田区)が担当した。
 施設名称の「RHUMB LINE」は航海用語で「目的地へ迷わず進むための定角航路」を意味する。所在する東京・八重洲は、五街道の起点である日本橋に近接し、現代では鉄道・バスといった公共交通のターミナルを形成している。そのため旅行者が次の目的地へ向かうための「旅の要所」でありたいという思いが施設名には込められている。
 建物は地上8階建てで、延床面積は1968・49㎡。1階はエントランスとショップ、2階はフロントとラウンジ、バーが設けられており、客室は2階から8階までの7フロアに30室が配置されている。1階のエントランスから2階フロントにかけての共用部には、最高級クリスタルブランド「バカラ」のシャンデリアを配置。柔らかく気品に満ちた輝きが宿泊者を迎え入れる。ラウンジスペースには大きなソファを配置し、洗練された高級感のある空間を演出する。また2階のバー「BAR36」は、葛飾北斎の「富嶽三十六景」から着想を得て名付けられ、カウンター後方の壁面には「富嶽三十六景」のほか「東海道五十三次」などの浮世絵作品を季節に合わせて展示する。
 客室は30㎡台から60㎡弱までバリエーションがあり、定員人数は1室あたり4名から8名。カソクの新井恵介社長は「主な客層は多世代のファミリーまたはグループで日本に中長期滞在するインバウンド旅行者です」と話す。すべての客室には本格的なキッチンのほか、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯乾燥機といった家電製品、食器や調理器具一式を備え、中長期滞在のニーズに対応する。また客室内の備品やアメニティには、素材や技術にこだわったオリジナルアイテムや、日本各地の逸品をセレクト。天然素材にこだわったオリジナルルームウェアは、適度な体温調節を助け良質な睡眠をサポートする。

中高層ビルシステム採用 工業化で施工の合理化図る
 同施設のもう1つの特徴が、旭化成ホームズの中高層ビル建築技術「ヘーベルビルズ」を採用した点である。「ヘーベルビルズ」は、戸建てや集合住宅で蓄積してきた同社の技術を応用した、最大8階建てまで対応する都市型中高層ビルシステムである。躯体は中高層用のシステムラーメン構造を採用し、各階の階高を2・8~3・5mの範囲で設定可能とすることで、空中階の商業用途にも対応。また同社の「ヘーベルハウス」と同様に、外壁のALCコンクリート「へーベル」の取り付けには地震時の変形に対する追従性の高い独自のロッキング工法を用いている。
 また、柱や梁、接合部分などの部材を工場生産とし、配筋工や型枠工などの専門工が携わる基礎工事も工業化するなど、現場での工程を極力単純化することで施工の合理化を図っている。旭化成ホームズの担当者は「昨今では建築費の高騰や職人の確保が大きな課題となるなかで、『ヘーベルビルズ』は建築工程における工業化によって品質の確保とコストダウンを実現します」と話す。
 「RHUMB LINE TOKYO」は「東京」駅前という抜群のロケーションを武器に、観光を目的とした中長期滞在のインバウンド客を中心に開業から順調な滑り出しとなった。宿泊料金は1室あたり8万円から(2名利用、1泊2日の場合)となっている。海外からのインバウンド需要はいまだ根強く、ニーズにマッチした開発事例といえそうだ。


賃貸住宅をアパートメントホテルへ転換 「Minn 奥浅草」を開業
 SQUEEZE(北海道北広島市)は先月29日、アパートメントホテル「Minn 奥浅草」を開業した。同施設は賃貸住宅として開発された建物を、アパートメントホテルへとコンバージョンしたもの。企画からシステム提供・導入、開業後の運営に至るまで、同社が一気通貫で手掛ける。
 場所は東京都台東区浅草3丁目。つくばエクスプレス「浅草」駅から徒歩7分、東武スカイツリーライン「浅草」駅北口から徒歩10分に位置する。
 先月27日にはメディア向けの内覧会が開催された。1階にはセルフチェックイン機を設置。鍵を使わずに客室に入室可能となっている。またフロント業務の効率化を実現した。2階部分は吹き抜けにすることで、開放感のあるエントランス空間を創出している。
 客室は4タイプ、全40室。専有面積は25~45㎡。最大9名まで宿泊可能である。客室内はバンクベッド方式を採用した。乾燥機能付きドラム式洗濯機や冷蔵庫、電子レンジなどを備え、長期滞在需要に応える。一部客室からは「東京スカイツリー」を望むことができる。
 SQUEEZE担当者によると、現オーナーはホテル運営を目的に賃貸住宅として開発された同物件を取得。同社が企画の段階から担当した。予約状況はインバウンド客を中心に、3泊以上の長期滞在の予約が多いとのこと。駅から少し離れた立地だが、奥浅草を拠点として観光をする層に好評だという。




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