不動産トピックス
【5/4号・今週の最終面特集】地域密着!まちに還元する土地活用

2026.05.04 10:00
交流拠点やシェアモビリティの集積地に
所有地を地域の経済・コミュニティ活性に寄与
地域課題の解決はまちづくりにおいて重要な要素だ。コミュニティやスペースの運営だけではない、さらに一歩踏み込んだ柔軟な発想で社会を変えようとする事例を紹介したい。
所有地に複合福祉施設 福祉・カフェ・工房が一体に
GENKI INNOVATION COMPANY(埼玉県志木市)は先月1日、埼玉県新座市に複合型福祉施設「GENKI INNOVATION CENTER NIIZA」を開所した。
同社は2004年に代表取締役の中村敏也氏が「株式会社SHUHARI」として設立。志木市で一軒の認可外保育園からスタートした。その後2拠点目となる保育園「元気キッズ新座園」を開設。2015年には児童支援発達事業所を新座に開所するなど、教育・福祉の分野で事業を広げてきた。現在は埼玉県志木市、新座市、朝霞市を中心に約30施設の保育園、発達支援施設などを運営している。
「GENKI INNOVATION CENTER NIIZA」は敷地面積923・88㎡、延床面積921・33㎡、地上2階建て。従前は畑として使われていた土地を同社が4年ほど前に購入、昨年から開発を進めてきたという経緯だ。構成は児童発達支援などの福祉施設、カフェ、レンタルスペース、アート工房兼ギャラリー。西武池袋線「大泉学園」駅や東武東上線「朝霞台」駅などから車で10~15分ののどかな住宅街にあり、かつ同社の「保育園 元気キッズ 新座池田園」と公立小学校が隣接するため、平日は子どもたちで活気のある場所となっている。
同施設には生活支援員や児童指導員、保育士、看護師、言語聴覚士、などの専門スタッフが在籍し、保育・児童発達支援・放課後等デイサービス・就労支援・生活介護を一体的に運営することが特徴。就労支援、生活介護といった大人の障がい者向け事業は同社初の試みでもある。
障がいの有無や世代を超えて様々な目的で人々が集まれる施設はまだ例が少ない。開発計画も当初は就労支援施設を作る見込みだったという。不動産を取得して「ハブ」となる施設を開設したのはなぜか。コミュニティマネージャーの加藤恵氏はその背景を次のように語った。
「弊社代表の中村がスウェーデンを訪れた際、障がいのある方が定型発達の方と区別されることなく就労をしていた。日本ではあまり見られない光景だと感じたそうです。この体験から『日本でも本当はできることがあるのではないか』と刺激を受け、障がいの有無にかかわらず、誰もが笑顔になれる施設にしようと計画を改めたことがきっかけです」
レンタルスペースも整備 カフェは就労支援と連携
見どころのひとつであるカフェ「g and BAGEL FACTORY」は、志木市でベーグル専門店「GEs BAGEL WORKS」を運営する中村梢氏が監修。席数は14席、延床面積61・81㎡。採光の良い明るい雰囲気とアットホームな雰囲気が売りだ。看板商品は自家焙煎コーヒーと店内で焼き上げる本格ベーグル。今後は就労支援事業でも同施設の運営事務など様々な業務を担ったり、生活介護の利用者がアトリエを使ってアート活動を行ったりなど、施設全体をフル活用した支援を展開していく。
就労にあたっては抱える課題はひとそれぞれであることから、利用者一人ひとりの特性や希望に応じて役割を調整しながら支援を行っていく予定。イレギュラーな事象が起きたとき、あるいは理不尽なことが起きたとき。従業員の感情面をサポートするのが支援員の主な役目となる。
加藤氏は「はじめは小さな仕事から任せて、少しずつ自己肯定感を積み上げられるような支援を心がけています。今後は、本人の特性や希望に合わせて業務内容を柔軟に考えていきたい」と展望を語る。
カフェの向かいに作った染物や縫製、パッチワークなどができるアート工房と、作品を展示できるギャラリースペースも整備。ギャラリースペースでは定期的な展覧会の開催やオリジナルグッズの販売などを行うことで、利用者の作品制作のモチベーションにつなげる意図もある。2階には利用者が事務作業に使えるワークスペース、そして一般利用が可能な時間貸しのレンタルスペース兼ホールを設けた。
154・07㎡のレンタルスペースは1時間2000円で利用が可能。ヨガ教室やママ友同士の茶話会などのニーズに応えるほか、ピアノを設置して音楽療法の講師の誘致、不登校の子どものための学習塾の運営など、福祉・教育支援の事業に活用することも検討しているという。
出口サポートが重要 交流拠点で居場所創出に
同社は「GENKI INNOVATION CENTER NIIZA」の開業に合わせて社名も新しいものに刷新した。旧社名「SHUHARI(守破離)」の精神を引き継ぎ、古くからの教えを「守」り、利用者が自分や他者とかかわりあいながら殻を「破」り、最終的には自立して「離」れることをひとつの理想に掲げる。同施設の生活介護事業でも、利用者が自力で自宅から施設に移動ができるように生活支援員が公共交通機関の乗り方をサポートするなど、自立に向けた日常支援に力を入れる。
特別支援学校や放課後デイサービスまで、国内における障がい児に関わる教育や福祉の機関は幅が広い一方、卒業後のサポートは大きな課題となっている。特に人とのつながりが持てるような心の居場所は見つけることが難しい。「GENKI INNOVATION CENTER NIIZA」の開所には、そんな利用者にとって心の居場所でありたいという願いも込められている。所有不動産を活用してインクルーシブな環境を整備した同施設の今後に注目したい。
パーキングにシェアモビリティ 複数事業者を共同で利用可能
三井不動産リアルティ(東京都千代田区)は、電動モビリティのシェアリングを提供するLime(東京都港区)と連携。4月に展開を始めたシェアモビリティ「マルチモビリティポート」に、Limeが提供する電動シートボード「Limeラクモ」等を配備することを発表した。
三井不動産リアルティでは駐車場・駐輪場の「三井のリパーク」をはじめ、「三井のカーシェアーズ」や土地のマッチングサービス「ALZO」まで、土地の有効活用に関する事業を幅広く展開。特に「三井のリパーク」は全国1万6000カ所、駐車台数は25万4000台に上るなど多くのシェアを獲得してきた。
「マルチモビリティポート」では複数の事業者が展開するモビリティのシェアリングサービスを1つの拠点で利用できる。各サービスのユーザーにとってはポートが増えてより移動が便利になるだけではなく、カーシェアやシェアサイクル、電動モビリティ等と組み合わせることで、移動そのものの最適化を図れる。日常使いだけではなく、公共交通機関に次ぐ二次交通としての役割や観光利用まで、シェアモビリティのニーズが多様化している昨今。ノウハウを持つ大手不動産会社が「場の提供者」としてシェアモビリティ業界とタッグを組み、場の協調領域を担うことで、市場拡大に寄与することが期待される。
「マルチモビリティポート」ではLimeのほか、OpenStreet(東京都港区)が展開する「HELLO CYCLING」、Luup(東京都品川区)が展開する「LUUP」、ドコモ・バイクシェア(東京都港区)の計4社のモビリティシェアと連携。すでに一部のパーキングではポートの整備が進んでおり、Limeとは「三井のリパーク 南千住駅前第2」拠点を皮切りに連携をスタートする。今後は2026年度中に500カ所、2030年までに4000カ所の整備を目指していくという。
4月23日に行われたLimeの新サービス発表会のなかで、三井不動産リアルティのビジネスイノベーショングループ、星野純一グループ長は「駐車場の区画や駐車場の余剰地を活用することで、マルチモビリティポートの展開ができると考えている。首都圏・関西・名古屋、その他の観光地含めて拠点を拡大していきたいと思っております」と意気込んだ。



