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小林住宅/創建 「睡パ住宅」の実証実験を開始 2棟の住宅を建てて比較検証

2026.02.16 10:41

 建築・不動産総合企業の創建(大阪市中央区)と注文住宅専門メーカーの小林住宅(大阪市中央区)は、睡眠研究の第一人者である柳沢正史氏と共同で、住宅環境の違いが睡眠の質にどのような影響を与えるのかを検証する実証実験を昨年12月より開始した。
 同取り組みは住環境と睡眠の質の相関関係を解明し、最高の睡眠パフォーマンス(睡パ)を引き出す住宅性能の条件を追求することを目的とした。小林住宅と創建が全体の企画立案等を担うほか、被験者からの生態データの取得と一次解析等をS'UIMIN(東京都渋谷区)、取得データに基づいた住宅性能と睡眠の質との関連性の解析を筑波大学 国際総合睡眠医科学研究機構が担当。国内の建築環境工学の第一人者である慶応義塾大学・伊加賀俊名誉教授も研究全体についての助言を行うとし、多くの専門家が携わる一大プロジェクトとなる。
 実験を行うにあたり、条件の異なる2棟の実験棟を茨城県つくば市にある創建の分譲地内に建設した。2棟は立地・間取り、内装の素材や色を共通項としながら異なる住宅性能を有することで、シンプルに睡眠に焦点を当てた実験結果の取得を見込んでいる。
 2棟で変更を加えた項目は睡眠の質に影響を与えうる「温度」、「音」、「換気」、「光」の4点に関わる住宅性能。A棟(以下、外断熱住宅)には床下空間、屋根裏空間、構造躯体といった居室を取り巻く環境も含めて断熱材を外側から施工する外断熱工法を採用し、B棟(以下、内断熱住宅)には日本で一番多く普及している内断熱工法を取り入れた。前者の工法では屋根裏に熱がこもりにくく床下に冷気が入りにくい状態になることから、温度環境による睡眠の質・量の差異についてのデータ取得を期待できる。
 遮音性能については、外断熱住宅に気密性能の優れた樹脂サッシとトリプルガラスを採用。内断熱住宅にはアルミと樹脂の複合サッシとペアガラスという最も一般的な窓を導入することで、窓と建物自体の気密性能への影響について調べる。
 換気面では外断熱住宅に吸気・排気を機械制御で行う第一種換気、内断熱住宅には吸気は自然換気、排気は機械換気の第三種換気を採用。寝室のCO2濃度が与える睡眠への影響を追求する。また光の因子については、両棟ともに遮光カーテンを設け真っ暗な状態で検証することで季節による日照時間の条件の変化を考えないものとした。
 実験期間は2025年12月14日~2026年3月13日の3カ月間。20歳以上70歳未満の男女を対象に行われる。被験者は外断熱住宅で2泊したのちに内断熱住宅で2泊するというAパターン、内断熱住宅で2泊したのちに外断熱住宅で2泊するというBパターンのいずれかで実施。実験では被験者がそれぞれ実験棟から出社、帰宅するという普段通りの生活を営んでもらいながら、睡眠時の脳波計測や主観評価、心拍変動・血圧といった多角的な評価により効果測定を行う計画だ。
 昨今はリモートワークや夜間のスマートフォン閲覧などが短時間睡眠につながっていると言われている。加えて地球温暖化の影響による夏と冬が長くなる「二季化」も睡眠環境にマイナスの影響を与えているという見方もある。
 先月30日に行われた実証実験の説明会の中で、創建 代表取締役社長の吉村卓也氏は「OECDの調査によると、日本における1人当たりの睡眠時間は先進国33カ国中で最下位」と指摘したうえで、今回の取り組みに対する思いについて次のように語った。
 「2020年に30億だったスリープテック市場は、27年には5倍以上の160億円規模になると見込まれております。一方で我々としては対症療法ではなく、住宅を供給する会社として人々の住宅環境に対する意識、重要性を認知してもらうことを目的に、人生の大半を過ごす住宅での根本的解決に挑み、日本が抱えるこの大きな問題の解決に少しでも貢献できないかと考えております」
 検証の結果は2026年10月に報告される予定だ。




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