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テナントリーシングを支援する「テナポ」 富山エリアの発生化へ地元企業が立ち上げへ
2025.12.15 10:27
VRやAIステージングを駆使し魅力発信
内装・電気・住宅設備工事を手掛けるスマイル(富山県富山市)がテナントリーシングを支援するポータルサイト「テナポ」を立ち上げる。富山エリアのテナント物件の空室が目立つなか、VRやAIステージングなどを駆使し、県内外の企業誘致に役立てる。山田智哉社長は「エリアの活性化につなげていきたい」と意欲を示した。
「テナポ」開設の背景は地域活性と業務効率化を支援
テナントポータルサイト「テナポ」を開設したのは、約3カ月前。まだ本格的には開始しておらず、現在のサイトは「デモサイト」となっている。本格的に始動するのは来年からを予定しており、現在は「テナポ」への掲載物件を増やすべく地元不動産仲介会社などへのアプローチを進めている。
スマイルは内装・電気・住宅設備工事などの工事業を主にするとともに、地元不動産会社などからの引き合いで建物の総合メンテナンスも担っている。一方、不動産仲介などの事業は行っておらず、今回のようなポータルサイトも初の試みだ。
山田智哉社長に「テナポ」開設のいきさつを聞くと、「中心部である『富山』駅周辺エリアでも、特に個人オーナーが所有する物件で空室が目立ってきている」と話す。地方エリアでは支社・支店の統合が進み、新規の進出も少ないなかで、新規のテナント誘致が難しくなっている。富山エリアの市場環境もそれに近いものがあるようだ。
また山田社長は不動産会社の「業務効率化にもつなげたい」とも話す。地域密着型の不動産会社では少人数で業務をこなすことがほとんどだ。物件確認やリーシングのための情報発信・掲載業務、さらにVR内見やAIステージングに対応するのは、ノウハウや経験がないと多くの時間を要する。「テナポ」を活用することで、こうした業務の効率化も期待できる。
「『テナポ』は1物件1社のみ掲載としていて、専任型掲載を原則としている。月額基本料金1万円で最大3物件まで掲載できるようにしている。これにより、従来のポータルサイトのような1つの物件で複数の不動産業者が掲載するような情報の錯綜を防止できるとともに、ポータルサイトを活用することで内見時のスケジュール調整の手間を省くこともできるようになっています」(山田氏)
最新技術を活用して「入居後」想定しやすく
「テナポ」は従来のポータルサイトのように、テナントを募集している物件一覧が掲載されており、物件情報や賃料・敷金、共益費などの情報が掲載されている。真骨頂は、詳細ページに入ってから各物件でVR内覧と、AI内装シミュレーションが実装されているところだ。
VR内覧は専有部を本当に内覧しているかのように、実際に歩いているような感覚で自由に室内を見ることが可能だ。さらにVR内覧画面にあるものさしマークをクリックすると、天井高や出入り口の高さなどの寸法も確認することができる。山田社長によると「寸法はあくまで概算で、最終段階では実際に内見していただいて測る必要はあります」とのこと。それでもこれまでのVR内覧にはなかった、「かゆいところに手が届く機能」となっている。
今後、実装予定の機能もある。それが「マーキング」だ。設備などにマークをつけることもできて、たとえば分電盤のマークを押すとどのような型番のものを使用しているか確認することができる。
加えてAI内装シミュレーションがあることで、入居後のオフィス空間をイメージしやすい。物件の詳細ページから物件画像を選んで、「カジュアルなオフィス」などと要望すると、AIが内装イメージを生成してくれる。サイト内には「モダンオフィス」や「木目調のある空間」などあらかじめ設定されたキーワードも用意しており、そこからさらに要望を追加することも可能だ。
こうした機能は頻繁に内見に行くことのできない県外の企業などにとって、利便性の高いものとなっている。中長期的には富山市内の主要幹線道路沿いやデジタルサイネージでの広告看板掲載サービスも展開を予定しており、「テナポ」と合わせた効果的な情報発信を通じて空室期間の短縮化を実現していく。
インスタグラムで反響 地元での周知強化へ
山田社長は現状の課題について「まだ地元の不動産会社などへの周知が不足している」と悩む。無料掲載物件も募集していて引き合いもあるものの、「まだ件数は足りていない」とのことだ。
一方でインスタグラムでは一定の反響を得る。富山の空撮映像は大きな反響を呼んでおり、県外の企業からアプローチも受けているようだ。
山田社長は「『テナポ』を始めたのは、空きテナントに対して企業などを誘致したいという思いからで、さらに深掘りすれば北陸・富山を盛り上げていきたいと考えている」と強調したうえで、「そのためには、地元でパートナーとなるような企業を増やしていくことも必要だと考えている」と続けた。
「テナポ」では富山のビジネス的な魅力や中小企業・テナント向けの賃料やリノベーション、設備投資などの支援制度もまとめている。従来のテナント需要だけでなく県外の新しい需要も富山に呼び込むために、本格始動へ向けて走っている。(画像提供・スマイル)



