不動産トピックス

【7/7号・今週の最終面特集】新ビルめぐり 淀屋橋ステーテョンワン

2025.07.07 10:31

大阪中心部・淀屋橋に新ランドマーク
国際競争力と魅力の向上に資するまちづくり推進
 万博開催で国内外からの観光客誘致に弾みをつけている大阪。その中心地では大型の開発プロジェクトが数多く進み、都市機能の更新が着実に展開している。

御堂筋の玄関口に位置し「淀屋橋」駅に直結
 中央日本土地建物(東京都千代田区)と京阪ホールディングス(大阪市中央区)が、みずほ銀行(東京都千代田区)と共同で大阪市中央区北浜において開発を推進してきた大規模複合ビル「淀屋橋ステーションワン」が5月30日に竣工した。6月下旬よりオフィスフロアのテナント入居が順次開始となり、商業ゾーンも第1弾店舗がオープンを迎えた。
 本プロジェクトは、中央日本土地建物が所有する「日土地淀屋橋ビル」と京阪ホールディングスが所有する「京阪御堂筋ビル」を共同で建替えるもので、竣工した「淀屋橋ステーションワン」の建物規模は地上31階地下3階建て。敷地面積は約3940㎡、延床面積は7万3102㎡。2022年7月に新築工事が着工され、今回の竣工となった。建物は大阪中心部の大動脈である御堂筋の玄関口に位置し、地下では京阪本線およびOsakaMetro御堂筋線「淀屋橋」駅に直結する。建物全体のコンセプトを「Life Connecting Oasis.」とし、オフィスやレストラン、ショップなどの機能を集積。約150mの建物高さは、エリアで最も高く地域のランドマークとして開発段階から注目を集めてきた。
 梅田から淀屋橋・本町にかけての大阪駅周辺・中之島・御堂筋周辺地域は、都市再生緊急整備地域ならびに特定都市再生緊急整備地域に指定されており、地域の整備方針として高規格なオフィスの実現など業務機能の高度化を通じて、多様な機能を持った国際レベルのビジネス地区の形成を目指している。その中で、「淀屋橋ステーションワン」では都市再生特別地区制度を活用した施設として、大阪の国際競争力と魅力の向上に資するまちづくりを推進する。建物外観は大阪市が策定した「御堂筋デザインガイドライン」に沿った建築デザインとし、高さ約50mに形成された基壇部の軒線は、御堂筋沿線の統一感のある景観に調和している。

環境性能に特化したオフィス 「SENQ」は関西初進出
 主用途であるオフィスの総面積は約3万9000㎡で、基準階面積は約1600㎡。アウトフレーム工法より柱のないオフィス空間を実現し、貸室内のオフィスレイアウトの自由度に貢献する。また専有部内の窓枠には自然換気装置を設けているほか、低層用エレベーターのシャフト部分の上部を活用したボイド空間(吹き抜け)内の重力換気により、1時間あたり約2回の自然換気が行われ、オフィス内にいながら屋外の新鮮な空気に触れることができる。また高層階のボイド空間の一部は自然光を感じられるリフレッシュスペースとしても活用するほか、高性能外皮による熱負荷の低減や昼光センサーによる調光制御、高効率のコージェネレーションシステムによる排熱利用などを通じて、建物全体で省エネルギー化を実現。「BELS」5つ星や「ZEB Oriented」といった環境認証を取得している。
 10階および11階では、中央日本土地建物が運営するオープンイノベーションオフィス「SENQ(センク)淀屋橋」が今夏に開業する。今回の開業で「SENQ」としては7拠点目となり、関西エリアでは初の拠点となる。施設内は会員が利用可能なコワーキングスペースや、3名から11名まで対応する家具付き完全個室の小割オフィス、100名超まで収納するカンファレンス、1名用のソロルームで構成される。また「淀屋橋ステーションワン」の入居企業と「SENQ」会員が利用できるワーカーラウンジも設けられており、多様な働き方への対応や利用者とテナント企業の交流の機会を提供する。

地価には多目的広場 最上階にはテラスも
 地下1階から3階にかけての低層部と最上階は商業店舗が入居する。6月下旬に開業したのは、地下1階のコーヒー専門店「猿田彦珈琲」、和菓子の「森のおはぎとキツネイロ」、サラダ専門店の「CHOPPED SALAD DAY」、1階のベーカリー「THE CITY BAKERY」、3階のコンビニエンスストア「セブンイレブン」の5店舗である。「淀屋橋」駅に接続する地下1階から2階にかけては3層吹き抜けの多目的広場「淀屋橋広場」を整備し、商業店舗の集積のほか観光ステーションの整備によって駅利用者や観光客への情報発信も行う予定である。中央日本土地建物の都市開発事業第一部リーダーの湯浅敬太氏は「この『淀屋橋広場』は地域に開かれたスペースとして、今後は様々なイベント企画の実施を想定しています」と話す。地下フロアは京阪電気鉄道と連携し、京阪本線「淀屋橋」駅へ接続する地下通路を一体的にリニューアルし、駅コンコースや周辺エリアへの歩行環境の向上を図るとともに、「淀屋橋」駅から「淀屋橋ステーションワン」にかけての地下通路を連続性のあるデザインとしている。
 30階は、全国でホテルや結婚式場、飲食店を開発・運営するディライト(奈良県奈良市)が、結婚式など多目的に使用できるイベントスペース「une osaka(ユヌ 大阪)」、ラグジュアリーレストラン「SOA(ソア)」、ダイニングレストラン「COVE DINING(コーヴダイニング)」の3つの店舗を開業する。30階には一般客も利用可能なテラススペース「淀屋橋スカイテラス」も設けられており、梅田や中之島といった大阪中心部の都市の景観を一望することができる。
 昨年は「グラングリーン大阪」など、梅田での大型開発が話題をさらった大阪エリア。2025年は歴史あるオフィス街の淀屋橋周辺に話題が移る。近年は梅田の再開発に伴う企業集積が加速しているだけに、「淀屋橋ステーションワン」の開業は地域における新たなオフィス需要の喚起や街の賑わい創出に期待がかかる。


<物件概要>
名称:淀屋橋ステーションワン
所在地:大阪府大阪市中央区北浜3-6-22
敷地面積:3940㎡(約1191坪)
延床面積:7万3102㎡(約2万2113坪)
規模:地上31階地下3階
高さ:約150m
用途:事務所、物販店舗、飲食店舗、駐車場
設計・施工:竹中工務店
竣工:2025年5月




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