不動産トピックス

【6/16号・今週の最終面特集】不動産オーナーを支える 家賃保証の最新動向

2025.06.16 10:48

家賃保証は+αで選択する時代
不動産事業者は利便性向上に貢献 早期対応と業務負荷軽減
 新規参入企業の多い事業用の家賃保証と、既に競争の激しいレッドオーシャンとなっている住居用の家賃保証。差別化や特徴付けがより重要となっている今、新たに住居用に参入する企業や不動産事業者の業務負荷軽減、早期対応に着目してチャットツールを始めた事例がある。
新たに住居用を開始 レジデンス家賃保証
  U―NEXT HOLDINGS(東京都品川区)のグループ会社で、事業用家賃債務保証サービスを提供するUSEN TRUST(東京都品川区)は、5月15日から住居用家賃保証サービス「レジデンス家賃保証」を開始した。USEN&U―NEXT GROUPの強みを生かした展開で、不動産事業者を中心に普及が進む。
 USEN TRUSTは2020年4月から事業用の家賃保証サービス「テナント家賃保証」を開始。月額賃料等(月額賃料、更新料、共益費、変動費、駐車場代、その他固定費)の最大24カ月分を保証し、残置物処理費用、原状回復費用、建物明渡訴訟費用等も保証範囲。滞納が発生してもオーナーには自動的に入金され、代位弁済請求の手続きが不要なプランも用意している。後に保証範囲の拡大と手厚い保証内容へ拡充した「テナント家賃保証Prime」も開始。保証限度額は月額賃料等の最大48カ月分。早期解約違約金、解約予告違約金はそれぞれ賃料等の6カ月分を限度まで拡大。原状回復費用も賃借人の同意がない場合も月額賃料等の6カ月分を限度に保証する。そのほか保証内容の充実とオーナー側から見た滞納リスク軽減も影響し、採用する不動産オーナー・事業者は現在も増えている。
 サービス開始から5年を迎えたタイミングで、住居用の家賃保証サービスを開始。保証限度額は月額賃料等の24カ月分相当で、テナント家賃保証と同様の保証範囲をカバー。また初回保証委託料は不動産事業者の裁量で設定が可能。物件の状態に合わせて柔軟に設定できるなど、事業者側のニーズに応えた。また入居者の無断退去・孤独死といった非常時に、解約手続きや残置物問題を早期に解決する「スムービングサービス」も用意。自死・犯罪死・孤独死などの死亡事故が発生した際には、生じた原状回復費用・空室家賃の損害を補償する「居室内事故補償」も付帯する。入居審査から各種手続きまでは「USEN Guarantee Web」で完結するため、業務効率向上にも貢献する。

「U-NEXT」のプレミアム特典を付帯
 最大の強みはU―NEXTプレミアム特典。入居者にはグループ会社のU―NEXTが提供する、動画配信サービス「U―NEXT」のプレミアム特典を付帯できる。不動産事業者は入居者募集の際に、「U―NEXT」が視聴可能なことをPRするだけで他の賃貸住宅と差別化できる形だ。またライフサポートサービスとして、入居者には引っ越し時に必要な各種インフラサービスを同社から提案する。引っ越しまでの限られた時間で、各種インフラを個別で契約することは手間である。それを同社が一括で、電話で申し込むだけで手続きができる。新生活の準備を円滑にサポートできることも強みだ。
 代表取締役社長の富田晃氏は「賃貸住宅のオーナーや不動産事業者はハード面ではなく、動画配信サービスによるソフト面での物件の差別化や付加価値として入居者へPRできます。昨今はおうち時間の満足度を高めるサービスとして動画配信サービスが注目されており、動画・映像コンテンツを取り扱っている当社だからこそ、他の家賃保証会社とは違った魅力形成と提案が可能です。またライフサポートサービスは、入居者が感じる手間や煩わしさを当社がまとめて解消できるサービスです。電気・ガスなどの契約に加えて、インターネットやウォーターサーバーなどのその他サービスについても電話1本で契約できます。各種インフラの案内を当社がすべて担当することで、物件を管理する不動産事業者などに新たに手間や業務は発生せず、利便性だけを追求できました」と語った。
 事業用の家賃保証サービス等で培った知見や販路を生かして、まずは既存の家賃保証の取扱店や既に交流・付き合いのある不動産業者へ提案していく。オーナーおよび不動産業社が取り扱う物件で入居者の各種インフラサービス契約が決まった場合、オーナー等にはインセンティブが発生することも魅力だ。今回住居用の家賃保証を始めたことで、賃貸不動産におけるほぼすべての用途が対象となった。今後も同社はグループでの強みも生かしながら、サービス内容の拡充を図っていく。

AI家賃保証窓口を開設 手間やタイムロスを削減
 アラームボックス(東京都新宿区)は、事業用の家賃保証サービス「ビジネス家賃保証」や企業向け与信管理クラウドサービスを提供している。4月17日にはAI家賃保証窓口を開設し、早期対応と利便性向上を実現した。
 同社は与信管理業務を効率化させるクラウドサービス「アラームボックス」を提供してきた。企業の信用調査や反社チェックなどに活用され、与信精度向上や業務負荷削減などに貢献してきた。同事業とともに反響・需要の大きなサービスが事業用物件対象の家賃保証サービス「ビジネス家賃保証」。オフィスや店舗などの事業用物件専門とし、連帯保証人が不要。保証内容は月額賃料等の24カ月分と弁護士・訴訟費用100万円まで。月額賃料や共益費・管理費に加えて、原状回復費用、残置物撤去費用、保管費用、更新料など保証範囲に含まれる。2017年9月に開始し、これまで約2万社が利用。与信管理のアラームボックスとともに利用する企業も多い。
 昨年12月からは業界初となるスタートアップ限定の家賃保証サービスを開始。「設立10年以内」と「ベンチャーキャピタル等より出資を得ている法人(株式会社)」の2つを条件に、賃借人は代表者保証・連帯保証人が不要。初回保証委託料も不要で契約できる。保証料や賃料等をカード決済でき、銀行での手続きも解消。カード払いをすることでポイントも得られる。一方オーナーや管理会社は家賃の収納業務が不要になり、退去リスクを軽減しつつ、テナント誘致におけるハードルも下げることができる。

電話よりチャットツール 夜間や土日祝日も対応
 今回は生成AIと連携した問い合わせ窓口「AI家賃保証窓口」を新たにリリースした。背景には需要が増している事業用家賃保証サービスに対して、不動産業界の慢性的な人手不足がある。不動産事業者は日々の様々な業務に追われ、人手不足に伴う業務負担も増加しつつある。複数物件を管理する現場では問い合わせ対応の迅速化や業務効率化が早急に求められている。
 アラームボックスは前述の課題に対して昨年の秋頃から対策を検討開始。生成AIと連携した問い合わせ窓口を新たにつくり、問い合わせ対応の手間やタイムロスを削減。利用者に対して迅速かつ的確なサポートが提供できる体制を整えた。特徴は具体的に質問できること。対話型AI「ChatGPT」との連携に加えて、同社独自の保証実務に関する学習を実施。汎用的なAIツールでは対応が難しい、自社サービス特有の情報や判断が必要な問い合わせにも正確かつ柔軟に対応できる。専門性を伴う質問や対応は企業の就業時間内でしか対応できなかったが、今後は夜間や土日祝日も含めて迅速にサポートできる。
 代表取締役CEOの武田浩和氏は「これまでクラウドサービスを提供してきた中で、ITリテラシーの高い企業や業務効率化を進める企業から、電話での対応よりも待ち時間がなく迅速にやり取りできるチャットツールの利用を望む声を受けていました。そのため当社では、こうしたニーズに応えるべく、問い合わせから回答までをスムーズに完結できるチャット機能を自社で開発しました。チャット上で手続きに関する回答や必要書類のダウンロードリンクをその場で受け取れることから、お客さまにとっても、すぐに問い合わせが完了できる利便性を感じていただいています。またAI家賃保証窓口は弊社のHP上に公開されておりますので、不動産事業者は入居者に弊社HPのURLを伝えればすぐに問い合わせ先を共有することが可能です」と語った。
 今後も会員サイト向けに、入居審査の受付や審査回答まで早急に対応できる環境構築を目指すとのこと。過去に審査対象の企業が対象となった明渡訴訟やコンプライアンス違反、悪評、支払や資金繰りに関する情報などもデータベース化し、一般的な財務状況での審査と組み合わせて審査結果を提示する。
 この提示を自社の強みであるAI活用と連携させることで、即時回答の仕組みも一部提供を開始しており、今後さらなる拡大を目指す。また住居仕様の家賃保証サービス提供会社が事業用物件の保証を始める際の再保証による連携および体制構築も目指している。再保証の際に同社のAI審査が活用できる仕組みづくりを目指しており、提携先のパートナー家賃保証会社も20社以上となった。これらサービス開始と環境構築は年内の計画で進めている。




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