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噂のスクランブル テナントの賃料第一主義を反映 坪200円の差で誘致合戦が大逆転
1995.12.01 16:19
ウィンドウズ95日本語版発売が大きな話題をさらうなど何かと注目されるコンピュータ業界。ハードの価格破壊もいわれるが、成長業種であることは間違いないだけに、テナント企業を探しているオーナー、仲介業者はその動向に熱い視線を送っている。
目下、市場で移転・拡張の動きが取りざたされているものだけでも、マイクロソフト、アップルコンピューター、ソフトバンク、コンパック、伊藤忠テクノサイエンス、アスキーなどの名前が挙がってくる。
中でも注目はA社。同社は現在、ある大手ビル会社の中核ビルに約2000坪を使用するキーテナントとして入居している。このA社が500~1000坪の増床を伴う一括移転を決断し、移転先を物色。
その結果、一旦は東京都外の主要ターミナル駅そばに建つ竣工間もない大規模ビルBに約2500坪を借りることで固まったとの情報が市場に流れた。
ところがこの話が間もなく急転回。賃料コストの安さを武器に、一躍都内にあるライバルビルCが登場したのだ。
聞けばBビルの賃貸条件は、共益費込みで坪当たり1万7000円。これだけ聞くと破格の好条件だが、一方、こちらも竣工間もないCビルの方は同じく共益費込みで坪1万6800円を提示。何とわずか200円差で、Cビルが土壇場で試合をひっくり返したという訳だ。
坪当たり200円の差といえば、仮に3000坪を賃借するとして月に60万円、年間700万円余りの違いとなる。Bビルキャンセルの背景には都内立地にこだわる東京本社役員の巻き返しがあったともされるが、何はともあれ、テナントの賃料第一主義を示すひとつのエピソードとして受け止められている。
しかし、最新の情報では、見事に逆転したCビルも、このテナントからビル壁面へのじしゃかんばんの設置の要求を拒否され、これに応じるか否かで、最後のツメの交渉がもたついているとされるが、さて去就はいかに。