不動産トピックス
快刀乱麻
1996.04.15 11:43
▼シンガポールで不動産バブルが起こっているという。その背景には東アジア諸国の政治的緊張があるようだ。一国家としての国際的認知を求める台湾に対し、中国がミサイル演習で威嚇する。中国返還が間近に迫ってきた香港でも、返還後の政治・経済体制に対する不透明感がつきまとう。こうした一連の構造、特に華僑、華人を取り巻く情勢の変化が、彼らを国外脱出に駆りたて、その有力な移住先の一つ、シンガポールで不動産物件が品薄になっているという構図だ▼彼らは皆、資金を持っての脱出組だけに、不動産価格を吊り上げる。住居にせよ、オフィスにせよ、賃貸物件では今年に入り2~3割の値上げは当たり前という状況だそうだ。日本の不動産関係者から見れば、何はともあれうらやましい▼我が国で過日のようなバブルが再来すると予想する人はほとんどいない。しかし、こと貸ビル市場についていえば、シンガポールの例に将来的な希望の芽を見いだすこともできるのではないか。シンガポールの強味は、国外から新たなユーザー層が次々と流入してくる点にある。我が国の場合、国際都市TOKYOという割にはまだまだ国内需要のみに頼り切っている面が強い。東京の人口が初めて流出超を記録したことでもあり、今一度、オフィスの国際化に真剣に目を向けていきたい。