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三菱重工 一部のフロアだけを免震化構造に 阪神大震災級でも効果大 既存ビルにも設置が可能
1996.11.01 11:43
三菱重工(東京都千代田区)では、既存ビルで特定の部分のみを免震化構造にすることができる「免震ルーム」を開発した。特に安全性を求められる部屋への有力システムとして注目される。
このシステムは、各部屋の床下に空気バネや滑りパッドなどを設置する事により、地震時の揺れを大幅に緩和しようとするもの。
具体的には上下方向の揺れには、空気バネによって動きを軽減させ、水平方向の揺れに対しては、滑りパッドの摩擦力により力を吸収する。阪神大震災クラスの地震でも、揺れをそれぞれ5分の1、2分の1以下に抑えることが可能だ。また部屋単位に設置することで、ビルの外壁に亀裂が生じてのその部屋だけは亀裂が生じることはないという。
同社では、阪神大震災での教訓に基づき、このシステムの開発に着手、特に最近実験室やコンピュータルームなど、気密性・安全性が最重要視される部屋だけ容易に免震化することに主眼を置いた。
同社が行った震度7(400GAL以上)の地震に対するシミュレーションでは、部屋内の自立型キャビネットや壁が、従来のものでは転倒、亀裂発生したものの、免震ルームでは全く影響は見られなかった。高価で貴重な機器・設備のてんとうや損傷は完全に防止することが可能で、財産の保護を図ることができるという訳だ。
唯一の難点は、このシステムの設置により上下それぞれ50cmから30cm程天井高が低くなること。しかし新築のみならず、既存ビルでも設置が可能であるほか、部屋単位で施工できるアドバンテージは大きい。さらに、ビル全体の免震化に比べ、低コストで施工が可能だ。価格は20平米約2000万円が目安。現地施工方式の為、工期は約半年となる予定。
「このシステムは、いわば地震等有事の際の保険の1つとして考えていただければと思ってます」(原子力部新型炉課加藤政彦氏)
同社では、将来的にこのシステムを年内10数億円規模にまで拡大させていきたいという。