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大成建設 大手ゼネコンリニューアルへの取り組み FM視点から改修事業を展開
1996.11.15 11:12
組織間連携を図り改修事業に注力 4万件以上の既存建物データを活用
大成建設では、今年の4月より、リニューアル推進部を特化させ、FM(ファシリティマネジメント)推進部を発足させた。リニューアル提案には、FM展開は欠かせないポイントの一つ。同社の新たな取組についてレポートする。
大成建設では、今年4月1日より、リニューアル推進部をFM(ファシリティマネジメント)推進部に変更した。つまり、顧客にリニューアルを提案していく上で、重要なのは、FMであると考え、その手法を取り入れ展開する方針を前面に打ち出した訳だ。同部は、FM計画室、施設管理計画室、リニューアル推進室から構成されている。
「不況による新築物件の減少と、スクラップアンドビルドの発送見直しを背景として、既存ストックをいかに生かし、リニューアルしていくかが、今後の課題」と、FM推進部 黒田満男部長は話す。「従来、建物は建築されっぱなしだった、しかし、ビルライフサイクル考慮すると、効率的な管理の重要性がわかる」(黒田部長)として、その役割を中心とするビル管理推進部も4月1日よりスタートさせている。同社では、リニューアル事業は、単独の組織では対応しきれないと判断。FM、耐震も絡め、組織の連携を図っていく方針だ。
その一方で、コンピュータによるシステム化も進めている。既存建物データベース4万数千件を整備し4月より運用している。このデータは、従来いより、自社施工物件に対し、施工後6ヵ月、1年、2年、5年、10年、15年(今年から追加)経た時点で、同社独自の品質保証体系に基づいた定期点検を行い、蓄積したもの。建物の履歴を戦略的に再構築する事で、多くの物件に早急な対応が可能となった。
また、実用的に活用できるよう改良を加えた長期修繕計画は、「運営管理のライフサイクルコスト(イニシャルコスト)削減の提案を求めるオーナーからの要望が多い」(黒田部長)。この計画書は、顧客への営業用ツールとしても使用されている。
「従来より、自社施工物件主体に取り組んできましたが、受け身的な対応であったのも事実。しかし社内の機能が充実されつつある今後は、積極的展開を図りたい」と黒田部長は語る。
リニューアル市場の極端な増加は今のところ見られない。しかし、ビル建設が成熟市場となった今、既存ビルの有効活用として、ストック事業に注力する必要があり、また、顕在化していない潜在需要があると同社では睨んでいる。さらにオーナーに対しては、ビルを経営する上で有利に働くリニューアルを提案していく方針だ。
大手デベロッパー物件が、リニューアル時期を迎えていることもあり、ゼネコンではその注力度を高めている。ゼネコン各社等が森ビルの改修事業受注に鎬を削ったとの話もあり、各社今後の動向が注目される。