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住専問題の遺産「日住金笹塚ビル」が50億円で売却 KDDグループ会社が購入 情報通信関連のテナントを積極誘致

1996.12.01 10:51

 国際通信大手のKDD(東京都新宿区)のグループ会社であるKDD開発が、渋谷区笹塚にある「日住金笹塚ビル」を8月に購入していたことが明らかになった。購入金額はおよそ50億円で、今後は賃貸ビルとして管理運営していくという。その概要をレポートする。
 この「日住金笹塚ビル」が平成4年1月に竣工。文字通り先頃解散した住専の一つである、日本住宅金融の所有ビルであった。
 この物件は、京王線笹塚駅前徒歩2分の場所に位置しており、地上8階建て、敷地面積1523.90平米、延床面積8219.23平米(基準階面積967.52平米)。各フロアには柱を建てない工法を採用しており、これは竣工当時、地元では大きな話題となったものだという。
 KDDk愛発芽この物件を約50億円で購入したのは8月。この付近では、地価がピーク時坪2800万円から、現在では800万円まで下落しているが、同社の他にも数社が購入の意思表示をしていたという。現在入口には「日住金笹塚ビル」の看板が掲げられているが、来年1月をメドに「KDD笹塚ビル」と、名称を変更する予定。
 購入当時、このビルは約80%の入居率であったが、現在では100%満室で稼働している。しかし、賃料は平成4年の竣工当時坪4万Ⅱ000円が、現在では2万3000円程度まで下落しているという。今後KDD開発では、賃貸ビルとして運営していく模様。
 そもそも同社がこのビルを購入した狙いは「駅前という好立地に加え、付近にマイクロソフト社があることで、今後コンピュータ系企業の需要が多く見込まれると考えたため」(KDD広報室 岩松カール課長)。
 従って住専処理に絡んでの購入では決してないと語る。しかし、一部では購入金額50億円という数字が、「現在の賃料を考えれば採算性の合う金額ではない」(仲介業者)という声や「競売にかかる前に、金融機関を撒言えてのトップ会談で電撃的に決定したようだ」(或る仲介業者)という話もあり、真相はいまひとつ不透明だ。




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