不動産トピックス
【11/24号・今週の最終面特集】ニーズを捉える リノベーションの現在地

2025.11.24 14:26
オーナー負担ゼロで空き家を再生 地域課題の解決を目指す
中古マンションを新築グレードのデザインにリノベーション
暮らし方の選択肢が多様化するなか、リノベーションに求められる役割も広がりつつある。既存の住宅ストックの価値をいかに再生し、住まいにどのような付加価値を加えるか。各社の取り組みの状況から、リノベーションの現在地を探る。
マンションの資産価値が上昇 家具メーカーとのアライアンスも
東急Re・デザイン(東京都世田谷区)は10月9日、新しいマンションリノベーション・パッケージ「Re_edit(リエディット)」の提供を開始すると発表した。
利用者と同社がともに「暮らしを編集していく」ことをコンセプトに掲げ、ライフスタイルまで含めて携わっていくことを提案する。
住宅事業部・事業戦略部業務推進チーム主任の徳田俊一氏は「都市部の新築マンションの価値が高騰し、中古市場も価格が上昇しています。資産価値は上がっている一方で、住み替えが難しくなっている。資産価値が上がったマンションに向け、よりグレードの高いリノベーションの選択肢があってもよいのではないかと考え今回の商品を設定しました」とする。
パッケージのデザインは「prime edition(プライム・エディション)」、「bare edition(ベア・エディション)」、「pale edition(ペール・エディション)」の3種類。それぞれ色や素材のトーンが異なる。価格帯はスケルトンリノベーションで1500~2500万円程度の予算を想定している。従来の1000万円前後のリフォーム・リノベーションは引き続きフリー設計で対応し、それ以上のグレードを求める層には「Re_edit」を提案するなど、すみ分けを図る。
テーマは「ホテルライクなリノベーション」。外資系リゾートマンションのような「生活感のない、安らげる空間」を想定しており、グループ会社がホテルの運営を行っているため、そこでの知見やノウハウを生かした商品となっている。家具や香り、アート、グリーンなどの要素も外部企業と連携して提案する計画だ。家具メーカーとのアライアンスも進行中。
主なターゲットはすでにマンションを所有しており、ライフステージの変化に合わせて間取りや内装の見直しを検討する層。プロが厳選した上質な内装をベース仕様とし、新築分譲マンション同様のグレード感を提案する。キッチンや洗面所、フローリングなどをパッケージから選択。仕様選択の時間などを短縮し、プラン作成の時間を確保できる。工事はスケルトンリノベーションまたは全面リフォームで実施する。
すでに20件を超える問い合わせがあり、1件が成約済み。年間で30件の成約を目指す。
徳田氏は今後タワーマンションや資産価値の高いストックマンションが増えるにつれ、ハイグレードなリノベーションを求める層が拡大すると見ている。
今後について徳田氏は「今までのリノベーションは空間だけの話が多かったと思います。しかし実際の生活ではソファやテーブルなどを含めて空間が成り立ちます。『Re_edit』はそういった家具やアート、香り、グリーンといった要素を含めて提案していきたい。今後もブラッシュアップを続けて、パッケージに追加していきたいです」と提案の幅を広げていく姿勢を示した。
なお同社は今回のプランと並行して、従来の東急コミュニティーが管理するマンションのリフォーム・リノベーションも引き続き行っていく。
リノベーションの設計・施工などを手掛けるルーヴィス(横浜市中区)は、オーナー負担ゼロで空き家を再生するサービス「カリアゲ」を展開している。
「カリアゲ」は空き家や空室を借り上げ、自社負担でリノベーションを実施。6~8年間サブリースで運用を行い、その間の賃料の10%がオーナーに支払われる仕組み。契約期間終了後、物件はオーナーに返却される。
同社は2005年に創業。当初はハウスクリーニング業を営んでいたが、その後リノベーション分野へと進出した。「カリアゲ」の立ち上げには、「空き家問題の解決に貢献したい」という思いがある。2015年頃から空き家が社会問題として注目されるようになり、オーナーにリノベーションを提案してきた。しかし多くのオーナーが初期投資の負担を理由に対応をためらう状況があった。そこで改修費用を負担することで、空き家再生を後押しする仕組みを構築。こうして誕生したのが空き家再生事業「カリアゲ」である。この10年間で、100件を超える実績を積み上げてきた。
設計から施工、サブリース運用までを自社で一括管理しているのが強み。
「カリアゲ」を利用するオーナーの約半数は、相続で取得したものの自分では住まない空き家の所有者。「相続はしたが売却までは踏み出せない」という層が多いという。改修費は6~8年間の契約期間内の貸出想定賃料をもとに算出。総賃料の約6割を改修予算として設定している。予算が超過する場合も、オーナーの追加負担や契約期間の延長などで柔軟に対応。「カリアゲ」が可能な仕組みを整えている。
主に築30年以上の戸建てを中心に手掛ける。団地や社宅、ビル、マンションなど幅広い物件にも対応する。水回りの交換やスケルトンリノベーションなど、建物の状態に合わせた改修を行う。
「全てをきれいにするのではなく、懐かしい新しさとして生かすこと」を差別化のポイントとして意識している。内装は貸し出しに支障のないレベルまで改修し、予算の余裕部分はデザイン性を高める工夫を施す。取締役の小井沼修司氏は「家具なら古いものはビンテージとして価値を持つのに、家は古いだけで価値が下がってしまう。そんな価値観を変えていきたいと思っています」と語る。
リノベーション後の入居者は20~30代前半のカップル、夫婦が多い。古い物件ならではのレトロ感やデザイン性に惹かれる層に支持されている。問い合わせの多くはSNS経由からだという。
対応エリアは都内、千葉・埼玉・神奈川。駅からの距離が15分ほどの立地でも、賃料設定が見合えばサービス対象としている。
古い物件が多いため、雨漏りやシロアリ、ネズミなどの害獣に対応することもある。また築古物件の課題として「資材の高騰、断熱や耐震への対応」なども挙げられる。「しっかり直していくために補助金を受ける、『カリアゲ』の契約期間を延ばすといった、ご提案の幅をもっと柔軟にして解決していければと思っています」(小井沼氏)
今後について小井沼氏は「まずは世田谷区などで空き家を利用して、創業支援に関わっていけたらと思っています。具体的には店舗付き住宅を増やしていきたい。また、大きな団地やビルなどの事例を増やしていきたいですね。法人様の開拓にも力を入れていきたいです」と前を見据える。
放置されがちな空き家を再生・活用するルーヴィスの取り組みは、地域の資産活用に新たな可能性を示しているといえそうだ。



