不動産トピックス
【9/22号・今週の最終面特集】建物管理の現場 人手不足問題への対応

2025.09.22 10:46
働く意欲持ったシニアの就業をバックアップ
若い世代にスキル・ノウハウを伝える役割も
人財育成に各社注力 DX化も積極的に推進
人手不足や建築費高騰は不動産や建設業界において大きな課題となっている。中でも建物管理に関する領域は労働集約型の産業とされ、人の手に依存する向きが強い。人手不足という課題に直面しつつも企業としての成長を目指すためには、新しいアイディアや取り組みが求められている。
平均年齢68.4歳 70歳以上も活躍
マイスター60(東京都千代田区)は、シニアに特化した人材サービスを手掛け、定年退職後も働き続けたいという意欲を持ったシニア世代の支援を行っている。同社は中小企業投資育成株式会社法に基づき設立された公的機関である大阪中小企業投資育成の設立投資第一号としての出資を受け、1990年に設立。「年齢は背番号 人生に定年なし@」の価値観のもと、建設・施設管理をはじめとする技術部門を中心にスキルを持ったシニア層の働き手と企業のマッチング実績を豊富に持つ。
手掛けているサービスは、任意の期間で必要とする専門スタッフを派遣する人材派遣、一定の期間を派遣社員として従事し契約終了の際に本人と企業の双方の合意を確認し人材紹介を行う紹介予定派遣、業界の動向に精通したコンサルタントが最適な人材を提供する人材紹介の3つの形態となっている。このほか、設備管理技術者育成プログラムやシニアセカンドキャリア支援プログラムを通じたシニアの就業支援にも注力している。創業から現在までの雇用創出数は累計で9200名。勤務中の派遣スタッフは300名を超え、平均年齢は68・4歳。中でも70歳以上の割合は全体の48%を占める。
人手不足の影響は建設や施設管理の現場において特に顕著となっており、技術的な専門性の高いこれらの職種は現場での業務が属人化しやすく、スキルやノウハウを若い世代に伝え育成していくことが大きな課題となっている。また離職率の高さも企業にとっての大きな課題といえるだろう。こうした中、豊富な経験や専門的な知識と資格を持つシニア層の労働力を活用することで、企業は信頼性の高い現場業務の遂行とともにスキルやノウハウの伝承にもつなげることができる。
マイスター60の取締役シニアビジネス事業部長である栁川忠興氏は「当社では働く意欲を持ったシニアの就業支援や活躍の場の提供を通じて、社会全体の利益を追求する公益資本主義のもと、社員や顧客、地域社会といったすべてのステークホルダーの満足度の最大化を目指しております」と述べる。シニア人材に特化した同社サービスは、企業、ひいてはその業界の持続的な成長の実現に近づく有効策として、多くの企業から注目が集まっている。
ロボット等の活用でメンテナンス業務をDX
建物管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)をはじめ、ビルメンテナンス会社専門の経営コンサルティングを行っているビルポ(東京都中央区)は、NTTドコモビジネス(東京都千代田区、旧NTTコミュニケーションズ)とビルメンテナンスDX領域における協業を開始。両社はさまざまな施設へのロボット導入を中心としたビルメンテナンスのDXに取り組み、人手不足への対応やIT機器を効率よく活用したスマートメンテナンスの実現に取り組む。
ビルメンテナンス業界では最低賃金上昇によるコスト負担の増加や、高齢化による人手不足への対応が求められており、特に清掃業務において人的リソースの代替としてロボットの活用が検討されている。しかし、ロボット導入後の運用を安定させ費用対効果を最大化するためには、ロボットの適切な活用とともに人手による清掃も含めた業務プロセス全体の見直しが不可欠である。
また、ネットワーク環境の整備やエレベーターとの連携機能の構築、各種センサーの導入など、ビル自体のインフラおよび周辺環境の高度化といったスマートビル化も必要となる。一方でこうした仕組みを一挙に導入することは、特に既存ビルにおいて初期コストや運用面での課題から現実的ではないケースも多く、段階的にスマートビル化を進めることが重要である。
ビルポは清掃をはじめとしたビルメンテナンス業務とロボット運用業務の双方に精通しており、これまでビルメンテナンス業務のコンサルティングや清掃ロボットなど約2000台のサービスロボットの導入支援に取り組んできた。
一方、NTTドコモビジネスは複数のロボットを管理・制御するロボットプラットフォームや、ロボットや最先端のICT環境を支えるネットワーク、IoTセンサーや設備を連携させるビルOSなど、スマートビルの実現に向けたICTインフラの提供に取り組んできた。今回の協業を通じて両社はロボットやICTを活用したビルメンテナンスDXを推進し、業界が直面している人手不足や業務効率といった社会課題の解決を目指す。
具体的な取り組みとしては、ビルメンテナンス業務の最適化コンサルティングから、ロボット派遣・運用ソリューションを一体となって提案。まずは導入ハードルが低く、費用対効果が見込める清掃ロボットの活用を推進し、ビルごとの特性に合わせ現場スタッフとの協働も加味した最適な導入プランを設計する。その後、ロボットの台数や用途の拡大に合わせてネットワーク環境の整備やICTセンサー、AIの導入を段階的に進めることで、ロボット導入効果の最大化およびロボットフレンドリーなスマートビルの実現に寄与する。
清掃業界で初 外国人FCオーナーが誕生
243の国や地域を出身とする32万人以上の在留外国人が登録している日本最大級のメディアを運営するYOLO JAPAN(大阪市浪速区)は、米国発祥の清掃フランチャイズ事業「カバーオール」を展開するダイキチ(大阪府貝塚市)において、YOLO JAPANが提供する求人サイト「ヨロワーク」を通じて、清掃業界で初となる外国人向け加盟パッケージで外国人フランチャイズオーナーが誕生したと発表した。
ダイキチは清掃・ビルメンテナンス事業を中核としながら、不動産事業や衛生商品のレンタル・販売、宅配水の提供など、多岐にわたる事業を展開。主に、米国・カバーオール社のフランチャイズシステムを導入した「ダイキチカバーオール」にて、ビルや各種施設の総合管理業務を行っている。日本国内では特にサービス業における労働力確保は大きな課題となっている一方、日本人労働者と外国人労働者の平均賃金には大きな隔たりが生じている。YOLO JAPANではこうした「企業の労働力不足」と「意欲ある外国人のキャリアアップ・収入向上」という2つの課題を可決するため、企業の多様な採用ニーズとキャリア志向の在留外国人をつなぐプラットフォーム「ヨロワーク」を提供している。
今回、ダイキチは外国人材の活躍推進を目的とした清掃業界で初となる外国人向けFCプランを開始するにあたり、「ヨロワーク」を導入。韓国籍の50代男性が外国人FCオーナーとして加盟することとなった。このFCオーナーは「家族のためにもっと稼ぎたいと思っていた時、『ヨロワーク』でダイキチのFCオーナー募集という求人を見つけました。事業主として挑戦できる環境と、頑張った分だけ収入につながる仕組みに大きな魅力を感じ応募しました」と述べている。